popoのブログ

超短編(ショートショート)

雑談

澄み渡る空のような瞳

静かな午後の光が、窓辺で本を読んでいた少女の髪を金色に染めていた。 母親は、そんな娘の姿をリビングからじっと見つめていた。 娘の瞳は、まるで夏の空のように澄み渡っていた。 どこまでも続く青い空に、白い雲が ぽっかりと浮かんでいるような、そんな…

初日の出のキス

静まりかえった部屋に、柔らかな朝日が差し込む。 カーテンの隙間からこぼれ落ちる光が、眠る二人の顔を照らしていた。 「あ、もうこんな時間…」 女性が目を覚まし、横になっている男性の顔を優しく見つめる。 眠そうな目をこすりながら、男性もゆっくりと起…

最後の日の贈り物

静かに年が明ける準備が整う頃、 街は煌めくイルミネーションに包まれていた。 大晦日の夜、私はいつものように窓辺に佇み、 街の景色を眺めていた。 一年が駆け足のように過ぎ去り、残すところあとわずか。 今年一年を振り返ると、喜びもあれば悲しみもあっ…

年末の帰省

今年もまた、年末がやってきた。都会の喧騒から離れ、 実家へ戻る汽車の窓の外には、雪化粧した山々が連なり、 子供の頃の冬景色を思い出させた。 「あ、駅に着いたよ。」 母の優しい声が、私の意識を呼び戻す。 改札を出ると、父親がいつものように大きな笑…

同じ映画を、同じ場所で。

薄暗い部屋に、期待に満ちたざわめきが響き渡る。 大小様々なスクリーンが壁一面に埋め尽くされ、 その中央には、人々の視線を釘付けにする巨大なスクリーンが鎮座している。 今日は、この特別な場所で、 みんなが大好きなあの映画を、一斉に鑑賞する日だ。 …

ネバーランドに迷い込んだ少年

永遠の夜が輝く、夢見る島、ネバーランド。 そこには、大人になることを拒み、 少年の姿のまま永遠の冒険を続けるピーター・パンがいました。 ある日、ネバーランドに迷い込んだのは、 いたずら好きで心ない少年、トーマスでした。 トーマスは、現実世界で友…

おっちょこサンタ☆

今年もクリスマスがやってきた。 イブのサンタクロースは、世界中の子供たちに プレゼントを配るため、そりの準備で大忙し。 「よし、これで完璧だな!」 サンタクロースは、プレゼントの山を確認し、満足げに頷いた。 ところが、そりを走らせる時、 なんと…

テレホンカード

彼が初めてテレホンカードを手にしてから、 もう20年以上の月日が流れていた。 子供の頃は、新しいカードが出るたびにワクワクし、 コレクションケースに並べるのが何よりの楽しみだった。 デザインの凝ったもの、キャラクターもののカードを手に入れると、 …

残り1分

buzzer beater(ブザービーター)という言葉が、体育館中に響き渡った。 試合終了まであと1分。スコアは89対91。僅か2点の差でリードされている。地元チームの応援席からは、諦めきれないような、そしてわずかな期待を込めたような声が漏れる。 「お前ならで…

果ての二十日

かつて「果ての二十日」と呼ばれる日には、 人々は罪を恐れ、静かに過ごしたという。 しかし、その風習は薄れ、多くの人々が その日をただの1日として過ごしていた。 俺は、古書店で働きながら、古い書物に魅せられていた。 ある日、蔵書整理中に見つけた古…

こころの架け橋

神奈川県川崎市に住む、明るく元気な姉と、 千葉県木更津市で穏やかに暮らす妹。 二人は、生い立ちこそ違うものの、 血のつながりを超えた深い絆で結ばれていた。 しかし、二人が住む街は海を挟んで遠く離れており、 なかなか頻繁に会うことができずにいた。…

子猫の冒険

稲妻が光り、轟く雷鳴が夜空を切り裂く嵐の夜、 一匹の子猫が生まれた。 真っ黒な毛並みと、宝石のように輝く琥珀色の瞳が特徴の、 その子猫は「クロ」と名付けられた。 クロは、優しい飼い主の女の子と、二匹の兄妹猫たちと、 のびのびと幸せな日々を送って…

新しい手帳

春の息吹が心地よいある日、 栞はいつものようにスマートフォンで日記をつけていた。 今日の出来事、感じたこと、そして何より、彼のことを。 彼の笑顔、優しい声、一緒に過ごした時間… デジタルの画面に映し出される文字は、 栞の心の奥底に眠る感情を映し…

記憶の貯金

静かな夜、明かりを落とした部屋で、 老婦人は編み物をする指を止め、遠い日の思い出に浸っていた。 編み針が奏でるリズムは、まるで心拍数のようにゆっくりと、 そして確実に時を刻んでいた。 若い頃の彼女は、絵を描くことが大好きだった。 色とりどりの絵…

ビタミン万歳!

都内の高校に通う私は、最近少し元気がない。 大好きなバスケ部の練習も、以前のような勢いがなくなってしまった。 理由は簡単、受験勉強のストレスと、夜食の誘惑に負けてしまうからだ。 そんな私のところに、栄養士の叔母が現れた。 「最近疲れているみた…

ふたりを紡ぐ花

今日も街はパステルカラーに彩られていた。 しかし、彼の心は、その色鮮やかさとは裏腹に曇っていた。 数日前、大好きな彼女と大きな喧嘩をしてしまい、 そのまま気まずい状態が続いている。 「きちんと謝りたいな…」 彼は、何度も彼女に電話をかけようと思…

凍りついた現金

12月10日の朝、東京・府中の街は、冬の息吹を肌で感じていた。 いつものように現金輸送車が府中工場に向かう。 その車内に積まれたのは、従業員たちの給料、3億円。 だが、その現金は、まもなく歴史に残る出来事の舞台となる。 白バイ警官を装った男が現れ、…

光をつかむ

生まれつき右腕の動かない僕は、 青い空を見上げるのが好きだった。 僕は、自分のことを「普通じゃない」とどこか思っていた。 友達と手をつなぐことも、ボールを投げることも、できない。 いつもどこか置いていかれているような、 そんな感覚にさいなまれて…

平凡な日々に 世界は静かに目を覚ます

ある平凡な日の朝、世界は静かに息を潜めていた。 小鳥のさえずりがいつもより騒がしく感じられた。 少年は窓を開け、深呼吸をした。 爽やかな朝の空気の中に、どこか不穏な香りが混ざっているような気がした。 いつものように朝食を食べ、学校へと向かう。 …

ロマンスの神様

結婚して数年が経ち、日常に追われる日々を送るようになったふたり。 互いの愛情は変わっていないはずなのに、どこか心に距離を感じていた。 そんなある日、2人は偶然、初めてデートをした場所を訪れる。 そこで、過去の自分たちと重ね合わせ、今の自分たち…

靴下の中

地方都市に住むシングルマザーのメメは、 二人の娘を育てるため、夜な夜なスナックで働いていた。 経済的に苦しい状況の中、 メメは娘たちの将来を案じ、心を痛めていた。 「娘たちには苦労をかけさせたくない…」 そんなメメの姿を見ていたのは、近所に住む…

思い出がいっぱい

陽だまりの部屋で、おばあちゃんは アルバムを膝の上に広げていた。 指先で丁寧にページをめくりながら、昔の写真を眺めている。 そこには、幼い頃の家族の写真、学校での遠足の写真、 恋人との日の写真、そして今を写した写真が収められていた。 おばあちゃ…

少女の祈り

深い闇に閉ざされた牢獄。 鉄の扉の向こうには、生きた証であるかのように、 一輪の白い花が静かに息づいていた。 その花は、若く美しい少女、 アリアの手によって育てられたものだった。 アリアは、この国の支配者によって禁じられた宗教を信仰していた。 …

カレンダー

1月のページをめくると、そこには見慣れた街並みが雪化粧をしている。彼は、この写真を見ながら、君と初めて手を繋いだ日のことを思い出した。真っ白な世界の中で、君の赤いマフラーがひときわ輝いて見えた。 2月。バレンタインデーのページには、手作りチョ…

ふとした日

いつものように、起き上がり部屋のドアを開ける。 今日は特に予定もない、穏やかな一日のはじまりだ。 リビングに入ると、愛らしい笑顔で迎えてくれる妻の姿があった。 ふとした瞬間に、彼女の頬にできた浅いシワが目に入った。 日々、家事や育児に奔走する…

絵本作家と雨の音

雨音が窓を叩きつける。 部屋の中は、絵の具の匂いと、紙をめくる音だけが響いていた。 私は、窓の外をぼんやりと眺めていた。 雨粒が、アスファルトの上で小さな円を描いて消えていく。 その様子を、まるで物語の一コマのように感じてしまう。 最近、なかな…

いい肉の日と家族

待ちに待った11月29日。いい肉の日。 今日はお友達と遊ばずにお家でお父さんの帰りを待つ。 カレンダーに大きく丸をつけた11月29日。 一年の中でも、今日という日だけは、 お父さんが高級なお肉を買ってきて、家族みんなで 焼肉パーティーをする日だ。 いつ…

ネットショッピングの魔法

「ポチッ」とボタンを押した瞬間から、 私の心臓は高鳴っていた。 それはまるで、プレゼントを開ける前の子供のような高揚感。 画面に表示された「ご注文ありがとうございます」の文字が、 私の期待感をさらに大きく膨らませる。 今回購入した商品は、ずっと…

湯上りの牛乳瓶

仄暗い脱衣場の明かりの下、 若者はタオルで髪を拭いながら鏡に映る自分を見た。 少し紅潮した顔には、どこか満足げな笑みが浮かんでいる。 熱い湯船から出たばかりの体には、まだ湯気が立ち上る。 彼は洗面台に向かい、冷水を顔に浴びた。 ひんやりとした感…

古都のライブハウスから

古都の片隅にひっそりと佇むライブハウス「月影」。 そのステージで長年、ギター一本で歌い続けてきた男がいた。 彼の名は裕也。 どこか憂いを帯びた歌声と、心に染み入るようなオリジナル曲が、 静かに夜の帳を彩っていた。 歌声は、決して派手ではない。 …