地方都市に住むシングルマザーのメメは、
二人の娘を育てるため、夜な夜なスナックで働いていた。
経済的に苦しい状況の中、
メメは娘たちの将来を案じ、心を痛めていた。
「娘たちには苦労をかけさせたくない…」
そんなメメの姿を見ていたのは、近所に住む青年、シシだった。
シシはメメの優しさに惹かれ、ひそかに彼女を支えたいと考えていた。
ある冬の夜、シシはメメの家を訪れた。
「ごめんね。小さな部屋で」
「いえ。こちらこそ食事に誘っていただいて…」
「ううん。ちょっと寂しくてね。」
シシは部屋を見渡した。
するとメメの部屋の窓には、娘たちの小さな靴下が干されていた。
翌朝、メメは靴下の中をみて驚いた。
中にはシシからの温かいメッセージと、
娘たちへの小さなプレゼントが入っていた。
「いつもがんばっているメメさん。そんなメメさんに僕はチカラを頂いています。ありがとう。」
メメは、シシの優しさに深く感動し、涙が止まらなかった。
シシは、その後もこっそりとメメを助け続けた。
メメの娘たちが大学に進学する際には、学費を援助し、
メメが体調を崩した時には、病院に連れて行き、看病した。
シシは、メメや娘たちとの関係を誰にも話すことはなく、
ただただ影ながら見守り続けた。
そしてシシは、メメたちだけでなく
少しでも多くの人に感謝を伝えたい。
そう思うようになった。
年月が流れ、メメの娘たちは無事に社会人になった。
メメは、数年前にはスナックの仕事を辞め、
小さなアパートを借りて、娘たちと穏やかな日々を送っていた。
そして今ではシシは、多くの家族にささやかではあるが
決まった日に小さなプレゼントを配っていた。
「ママ!出かけるよ!」
「うん。」
窓の外に降る雪を眺めるメメは、
感謝の気持ちを抱きながら生きていく。