popoのブログ

超短編(ショートショート)

靴下の中

地方都市に住むシングルマザーのメメは、

二人の娘を育てるため、夜な夜なスナックで働いていた。

 

経済的に苦しい状況の中、

メメは娘たちの将来を案じ、心を痛めていた。

 

「娘たちには苦労をかけさせたくない…」

 

そんなメメの姿を見ていたのは、近所に住む青年、シシだった。

シシはメメの優しさに惹かれ、ひそかに彼女を支えたいと考えていた。

 

ある冬の夜、シシはメメの家を訪れた。

 

「ごめんね。小さな部屋で」

「いえ。こちらこそ食事に誘っていただいて…」

「ううん。ちょっと寂しくてね。」

 

シシは部屋を見渡した。

するとメメの部屋の窓には、娘たちの小さな靴下が干されていた。

 

翌朝、メメは靴下の中をみて驚いた。

中にはシシからの温かいメッセージと、

娘たちへの小さなプレゼントが入っていた。

 

「いつもがんばっているメメさん。そんなメメさんに僕はチカラを頂いています。ありがとう。」

 

メメは、シシの優しさに深く感動し、涙が止まらなかった。

 

シシは、その後もこっそりとメメを助け続けた。

メメの娘たちが大学に進学する際には、学費を援助し、

メメが体調を崩した時には、病院に連れて行き、看病した。

 

シシは、メメや娘たちとの関係を誰にも話すことはなく、

ただただ影ながら見守り続けた。

 

そしてシシは、メメたちだけでなく

少しでも多くの人に感謝を伝えたい。

そう思うようになった。

 

年月が流れ、メメの娘たちは無事に社会人になった。

メメは、数年前にはスナックの仕事を辞め、

小さなアパートを借りて、娘たちと穏やかな日々を送っていた。

 

そして今ではシシは、多くの家族にささやかではあるが

決まった日に小さなプレゼントを配っていた。

 

「ママ!出かけるよ!」

 

「うん。」

 

窓の外に降る雪を眺めるメメは、

感謝の気持ちを抱きながら生きていく。