popoのブログ

超短編(ショートショート)

ふたりを紡ぐ花

今日も街はパステルカラーに彩られていた。

しかし、彼の心は、その色鮮やかさとは裏腹に曇っていた。

数日前、大好きな彼女と大きな喧嘩をしてしまい、

そのまま気まずい状態が続いている。

 

「きちんと謝りたいな…」

 

彼は、何度も彼女に電話をかけようと思った。

でも、ついつい躊躇してしまう。

やっとの繋がった電話も、どこかぎこちなく

二人の仲は悪化する一方。

 

「こんなはずじゃないのに…」

 

そんな時、ふと目に入ったのが、

花屋のショーウィンドウに飾られたチューリップだった。

 

鮮やかな赤色が目に飛び込み、彼は足を止めた。

今の自分の気持ちにぴったりだ。

 

「俺は、気持ちを伝えたい…」

 

彼は、真っ赤なチューリップを一束買い、

彼女の自宅へと向かった。

インターホンを鳴らし、緊張しながら待つ。

 

しばらくして、ドアが開き、彼女が現れた。

彼女もまた、複雑な表情で彼を見ている。

 

「ごめんね、突然来て。これ、」

 

彼は、そっとチューリップを手渡した。

彼女は、花束を受け取り、しばらくじっと見つめている。

 

「この花、きれいだね」

 

彼女は、そう呟き、顔を上げた。

 

「うん。君に似合うと思って」

 

彼は、顔を赤らめながら答える。

 

「チューリップの花言葉は知ってる?」

 

彼女は、そう尋ねた。

 

「うん。知ってるよ。早く会いに来て、って」

 

彼は、少し照れながら答えた。

 

彼女は、静かに微笑んだ。

 

「私も、早く会いたかった。ごめんね、私のせいで」

 

彼女は、そう言って、彼の腕に抱きついた。

 

二人は、しばらくの間、何も言わずに抱き合っていた。

 

「今度こそ、ケンカなんかしないようにしようね」

 

彼女が、そう言うと、彼は力強く頷いた。

 

チューリップの花言葉が、二人の心を繋ぎとめた。

喧嘩をしてしまったけれど、この経験を通して、

二人の愛はさらに深まっていく。

 

今日も夕焼け空の下、

二人は手をつないで、ゆっくりと家路につく。

凍りついた現金

12月10日の朝、東京・府中の街は、冬の息吹を肌で感じていた。

いつものように現金輸送車が府中工場に向かう。

その車内に積まれたのは、従業員たちの給料、3億円。

だが、その現金は、まもなく歴史に残る出来事の舞台となる。

 

白バイ警官を装った男が現れ、

ダイナマイトが仕掛けられていると脅迫。

巧妙な手口で現金輸送車を停車させ、現金3億円を奪取。

現場に残されたのは、発煙筒の煙と、人々の驚きと恐怖だけだった。

 

それから数十年。事件は迷宮入りとなり、

真犯人は未だに捕まっていない。

人々は、様々な憶測を立てた。

プロの犯行なのか、複数犯か、単独犯か、

それとも何かの間違いだったのか。

一体、現金はどこへ消えたのだ。

 

ある冬の夜、雪が降りしきる東京の街角で、

老人が一人、小さな喫茶店に入ってきた。

彼は、コートのポケットから、古い新聞記事を取り出した。

そこには、3億円事件のことが大きく報じられていた。

老人は、新聞記事をじっと見つめ、遠い目をして呟いた。

 

「あの日はただ、自由が欲しかっただけなんだ」。

 

老人は、かつての自分と重ね合わせながら、

事件当日のことを思い出していた。

 

彼は、計画を練り、実行に移した。

だが、現金を得た後、彼は大きな後悔に苛まれた。

そう。お金は、彼の心を満たすことはなかったのだ。

 

そして彼は孤独へと突き落とされた。

 

「一緒にコーヒーを飲む友人すらいないか…」

 

老人は、コーヒーを飲みほし、静かに店を出た。

彼は、雪が積もった道をゆっくりと歩きながら、

過去の自分と対峙していた。

 

「金さえあれば、何でも手に入ると思っていた。」

 

「でも、金だけでは、幸せにはなれなかった…」

光をつかむ

生まれつき右腕の動かない僕は、

青い空を見上げるのが好きだった。

 

僕は、自分のことを「普通じゃない」とどこか思っていた。

友達と手をつなぐことも、ボールを投げることも、できない。

いつもどこか置いていかれているような、

そんな感覚にさいなまれていた。

 

そして僕は、いつも周囲の視線に戸惑っていた。

 

ある日、学校の図書室で、伝説の冒険家、

アレックスの物語に出会う。

アレックスは幼い頃に大怪我を負い、左足を失っていたが、

義足を付けて世界中を旅し、多くの困難を乗り越えてきた人物だった。

 

アレックスの物語を読んだ僕は、

初めて自分の境遇を受け入れられるようになった。

アレックスのように、自分も何かできることがあるのではないか。

そう思った僕は、科学コンクールに挑戦してみることにした。

 

コンクールのテーマは「未来の乗り物」。

僕は、自分の経験を活かして、

片手で操作できる新しいタイプの自転車を設計した。

 

僕は、何度も試行錯誤を繰り返し、

ついに自分だけのオリジナル自転車を完成させた。

 

発表の日、僕は緊張しながら自分の作品を発表した。

プレゼンテーションは、会場の大人たちだけでなく、

子供たちからも大きな拍手を受けた。

 

表彰式の後、僕は先生や友達からたくさんの祝福を受けた。

特に、いつも自分を見下していたクラスメイトが、

初めて僕を「すごい!」と褒めてくれたことが、心に深く残った。

 

僕の体は十分じゃないかもしれない。

だから僕はどこかで不自由な体を理由に

現実から逃げていたのかもしれない。

 

でも、大切なのは自分自身を受け入れることだと思った。

 

アレックスはこう言った。

「俺はみんなと同じように喜びや悲しみを経験している」

 

僕は今、自分の可能性を信じることが

いかに大切かを学んでいる。

 

そう。僕は創造的な少年なのだ。

 

平凡な日々に 世界は静かに目を覚ます

ある平凡な日の朝、世界は静かに息を潜めていた。

 

小鳥のさえずりがいつもより騒がしく感じられた。

少年は窓を開け、深呼吸をした。

爽やかな朝の空気の中に、どこか不穏な香りが混ざっているような気がした。

いつものように朝食を食べ、学校へと向かう。

道中、見慣れない軍用車両が何台も街を疾走していくのを目撃する。

 

学校に着くと、いつも通りの賑やかさとは

裏腹に、先生の表情はどこか硬かった。

授業中も、生徒たちの集中力は途切れがちで、

いつもなら笑い声が響いていたはずの廊下も、静まりかえっていた。

 

下校後、少年はいつも通り公園で友達と遊んだ。

しかし、友だちの顔にもどこか不安の色が浮かんでいた。

 

その夜、家族で夕食を囲んでいた時、

テレビから緊急ニュースが流れ始めた。

 

「本日未明、国境地帯において、大規模な武力衝突が発生いたしました。政府は国民に対し、冷静な行動を呼びかけています。」

 

ニュースキャスターの声が、少年の心に突き刺さった。

 

「戦争…?」

 

少年は、この言葉の意味をようやく理解した。

平凡な日常が、一瞬にして色を失っていく。

窓の外には、街全体が不気味な静けさに包まれていた。

 

翌朝、少年は再び窓の外を見上げた。

そこには、もういつもの平和な風景はなかった。

空には戦闘機が飛び交い、遠くに爆音も聞こえてくる。

少年は、この日が、「世界が永遠に変わってしまう日」だと悟った。

 

“人類史上最悪の戦争”

今ではそう呼ばれる争いがあった。

誰が何のために犠牲を払ったのか。

戦争の始まりがいかに突然で、そして日常を破壊するものか。

平和な日々が当たり前だと思っている私たちにとって、

戦争の恐怖は想像を絶するものであるだろう。

平和の尊さ、戦争の悲惨さ…。

 

それでも「戦争は起きた。」

 

私たちはその事実の上で、強く生きていかなければならない。

そして、同じ悲劇を生まないために。

ロマンスの神様

結婚して数年が経ち、日常に追われる日々を送るようになったふたり。

互いの愛情は変わっていないはずなのに、どこか心に距離を感じていた。

 

そんなある日、2人は偶然、初めてデートをした場所を訪れる。

そこで、過去の自分たちと重ね合わせ、今の自分たちに足りないものに気づく。

 

「ねえ、ここ覚えてる?」

 

彼女が指さしたのは、街角にある小さなカフェだった。

木製の温もりが感じられる店内は、柔らかな光に包まれていた。

 

「もちろん。初めてデートしたとこだろ」

 

彼は苦笑いを浮かべる。

若かった頃の2人は、この店で何度も時間を忘れて語り合ったものだ。

 

「あの頃は、毎日が新鮮で。どんな些細な事でも、一緒にいれば楽しくて」

 

彼女は窓の外を眺めながら、遠い目をする。

 

「そうだな。お互い、今じゃ考えられないくらい若かったし」

 

彼も昔を懐かしむ。

 

「でも、あの頃の気持ちを、ずっと忘れずにいたいなって」

 

彼女の言葉に、彼はハッとした。

 

「忘れずにいたい?」

 

「うん。私たち、結婚して、子供もできて。幸せだけど、どこか心に余裕がなくなっちゃった気がするんだ。お互いを当たり前だと思ってる自分がいる」

 

彼女の言葉は、彼の心に突き刺さった。

彼は、自分がいかに彼女の存在を当たり前にしていたか、

改めて気づかされた。

 

「ごめん。俺もそうかも」

 

彼は静かに謝った。

 

「でもさ。あの頃の気持ちを、今だって感じてるよ。君といると、いつも安心するし、楽しい。それは今も昔も変わらない。幸せだよ。」

 

彼女は、彼の言葉に顔を紅潮させた。

 

「私もだよ。あなたと結婚して、本当に良かった」

 

2人は、再び互いの手を握り合った。

 

カフェを出ると、夕焼けが広がっていた。

2人は並んで、その美しい景色を眺めた。

 

「いつまでも、ずっと、この気持ちを忘れたくない」

 

彼女がそう言うと、彼は優しく微笑んだ。

 

「うん。俺もだよ」

 

その日から、2人は意識して、お互いのことを大切にするようになった。

小さなサプライズを贈ったり、感謝の言葉を伝えたり。

 

さらに少しずつ、2人の関係は深まっていった。

 

「あの日、あのカフェに来て、本当に良かった」

 

ある夜、ベッドの中で、彼女がそう言った。

 

「ああ、俺も」

 

彼は、彼女を抱きしめ、静かに眠りについた。

 

その夜、彼はこんな歌詞の夢を見た。

 

「神様。感謝しています。」

「いつまでも ずっとこの気持ちを忘れたくない。」

ロマンスの神様。どうもありがとう。」

 

2人の愛はこれからも育まれていく。