吹雪が荒れ狂う、一面銀世界の大陸。
そこへ一人、男が辿り着いた。
彼は探検隊の隊員として、この未知の大陸を調査するため、
長旅の末にこの地へやってきたのだ。
男は極寒の地で、体力を消耗し、意識がもうろうとしていた。
最後の力を振り絞り、雪洞の中に潜り込む。
体中が震え、意識が遠のいていく中、かすかに何かが動く気配を感じた。
目を凝らすと、そこには二匹の犬の姿があった。
一匹は大きく、もう一匹は少し小柄な犬。
二匹とも毛並みは乱れ、凍てついた目で男を見つめていた。
男は驚きを隠せない。こんな極寒の地で、どうして犬が生きているのか。
男は持っていた最後の食料を犬たちに与えた。
二匹はそれを美味しそうに食べ、男にすり寄ってくる。
男は犬たちの温もりに触れ、孤独から解放されたような気がした。
二匹の犬。
彼らの祖先は、かつてこの大陸を探索していた探検隊に
同行していた犬たちの子孫だった。
その探検隊は、ある嵐によって基地を失い、隊員たちは命を落とした。
しかし、犬たちは奇跡的に生き残り、この地に定着したのだ。
二匹は兄弟で、両親は、厳しい環境の中でたくましく子孫を育て上げた。
限られた食料を分け合い、互いに体を寄せ合い、極寒の夜を乗り越えてきた。
しかし懸命な両親も、この極寒の地では限界だった。
二匹がまだ幼い頃に両親は力尽きてしまった。
それでも幼い頃から厳しい自然の中で生きてきたため、
二匹は優れた狩りの技術と、極寒の地での生存術を身につけていた。
彼らは、雪の下に隠れた小さな生き物を探し出し、鋭い牙で獲物を捕らえた。
また、雪洞を掘ることで、厳しい寒さから身を守った。
彼らの目は、「両親の分まで生き抜くんだ!」
という、強い、強いまなざしだった。
それから数日、男と二匹の犬は共に生活をした。
犬たちは男の体温を分け合い、時には男の体を舐めて温めてくれた。
男もまた、犬たちのために雪中から食料を探し、危険から守った。
厳しい環境の中、男と犬たちは強い絆で結ばれていった。
男は犬たちから、生きることの喜び、そして命の尊さを教わった。
犬たちもまた、男から愛情と信頼を受け、生きる希望を見出した。
やがて、探検隊の救援隊が到着し、
男は無事に基地へと戻ることができた。
しかし、男は二匹の犬を置いていくことを決意できなかった。
「お願いだ!」「頼む!」
男は基地の許可を得て、二匹の犬も共に基地へと連れて行った。
基地に戻った男は、二匹の犬に名前をつけた。
名前は「シロ」と「クロ」。
シロは大きく真っ白な毛並み、
クロは少し小柄で黒い毛並みを持つ犬だった。
シロとクロは基地の仲間たちにも可愛がられ、
男と犬たちは、新たな生活を始めた。
極寒の大陸で出会った奇跡。
それは、人間と動物の絆、
そして生きることの尊さを教えてくれた。