今日も街はパステルカラーに彩られていた。
しかし、彼の心は、その色鮮やかさとは裏腹に曇っていた。
数日前、大好きな彼女と大きな喧嘩をしてしまい、
そのまま気まずい状態が続いている。
「きちんと謝りたいな…」
彼は、何度も彼女に電話をかけようと思った。
でも、ついつい躊躇してしまう。
やっとの繋がった電話も、どこかぎこちなく
二人の仲は悪化する一方。
「こんなはずじゃないのに…」
そんな時、ふと目に入ったのが、
花屋のショーウィンドウに飾られたチューリップだった。
鮮やかな赤色が目に飛び込み、彼は足を止めた。
今の自分の気持ちにぴったりだ。
「俺は、気持ちを伝えたい…」
彼は、真っ赤なチューリップを一束買い、
彼女の自宅へと向かった。
インターホンを鳴らし、緊張しながら待つ。
しばらくして、ドアが開き、彼女が現れた。
彼女もまた、複雑な表情で彼を見ている。
「ごめんね、突然来て。これ、」
彼は、そっとチューリップを手渡した。
彼女は、花束を受け取り、しばらくじっと見つめている。
「この花、きれいだね」
彼女は、そう呟き、顔を上げた。
「うん。君に似合うと思って」
彼は、顔を赤らめながら答える。
「チューリップの花言葉は知ってる?」
彼女は、そう尋ねた。
「うん。知ってるよ。早く会いに来て、って」
彼は、少し照れながら答えた。
彼女は、静かに微笑んだ。
「私も、早く会いたかった。ごめんね、私のせいで」
彼女は、そう言って、彼の腕に抱きついた。
二人は、しばらくの間、何も言わずに抱き合っていた。
「今度こそ、ケンカなんかしないようにしようね」
彼女が、そう言うと、彼は力強く頷いた。
チューリップの花言葉が、二人の心を繋ぎとめた。
喧嘩をしてしまったけれど、この経験を通して、
二人の愛はさらに深まっていく。
今日も夕焼け空の下、
二人は手をつないで、ゆっくりと家路につく。