穏やかな陽射しが降り注ぐ、
とある商店街に隣接する公園。
木々の葉が風に揺れ、木漏れ日が地面に踊る。
公園の一角には、大きな木が枝を広げており、
その木に、動物のぬいぐるみがかけられていた。
そのぬいぐるみは、茶色いクマで、
首には赤いリボンが結ばれていた。
どこか寂しげな表情で、
持ち主を待っているようにも見える。
ぬいぐるみは、いつからそこにかけられているのか、
誰も知らない。
誰かが落としたのか、それとも捨てられたのか。
公園を訪れる人々は、そのぬいぐるみを見て、
何か一言、二言言葉を交わす。
「誰のぬいぐるみだろう?」
「寂しそうね。」
「持ち主はいないのかな?」
ぬいぐるみは、ただ静かにそこに佇み、
持ち主を待ち続けている。
数日後、商店街で働く老人が、ぬいぐるみを見つけた。
老人は、ぬいぐるみを哀れに思い、
家に持ち帰ろうとした。
しかし、ぬいぐるみを家に持ち帰る途中で、
老人は不思議な体験をする。
老人がぬいぐるみを抱きかかえ商店街に入ると、
突然、商店街全体が明るく輝き、活気が出始める。
「いらっしゃい!」「ありがとう!」
「ひさしぶり!」「ごちそうさま!」
老人の耳には、
人々の明るい挨拶や笑い声が聞こえてきた。
老人は、これはぬいぐるみの力だと確信した。
そして、ぬいぐるみを商店街の入り口に置くことにした。
ぬいぐるみが置かれてからは、
商店街に不思議なことが起こり始めた。
店の売り上げが上がったり、
病気の人々が元気になったり、
困っている人々が助けられたり。
人々は、ぬいぐるみが商店街に幸運をもたらしてくれる
と信じ始めた。
そんなある日、公園で遊んでいた子供が、泣いていた。
その子供は帰り道に
商店街の入り口にあるぬいぐるみと目が合う。
茶色だったくまの肌は少し色褪せているようにも見える。
それでも体にはカラフルな真新しい服が着せられていた。
居場所をみつけたんだね。
子供は公園で遊んでいる時に
何度か目にしたぬいぐるみ。
そんな、ぬいぐるみは以前よりも
幸せそうな表情に見えた。
(泣いてちゃダメだ。)
子供は涙を拭い笑顔を見せた。
ぬいぐるみは、今も商店街の入り口に置かれ、
人々を見守っている。
何かみんなに
「ありがとう。」
と言っているかのように。