popoのブログ

超短編(ショートショート)

同じ人間

 

これはまだ赤い瞳の種族がいた頃の話。

 

「また喧嘩か。」

「どうせあいつらだろ。」

「ああ。また赤い奴らだってさ。」

 

赤い瞳の種族は少し気性が荒かった。

というよりは、感情の抑制が苦手だった。

すぐにカッとなる。怒ってしまう。

そう思われがちだが

すぐに悲しくなる。すぐに落ち込んでしまう。

そんな種族でもあった。

 

しかし国内で起こった殺人。暴力。強盗。

そういった事件には多くの赤い瞳たちが

関与していたのも事実だった。

 

「あいつらを全て捕まえろ!」

そしてまた、この国は独裁者が支配していた。

 

各地では多くの赤い瞳が捕らえられた。

寝たきりの老人も、

街の医者で優秀であっても、

まだ言葉もわからない幼子も。

「あいつらはいつ暴走するかわからない!」

関係なかった。

 

その不合理な指令は、赤い瞳を刺激した。

各地で、反発した赤い瞳と国の警備との

争いが激化した。

 

バン!  パン!パン!

 

国は遂に、銃を使ってまでも捕らえるようになった。

 

捕らえられた者たちは

僅かな食べ物を与えられるだけで

生きている意味さえ見失ってしまった。

 

「違います!その子は違います!」

「うるさい!だまれ!」

「違うんです!目が悪いだけなんです!」

「さっさと連れていけ。」

「やめて!!」

目が充血してしまう病を持った子ども。

正確には瞳は赤くない。

それでも「疑わしきものは捕らえよ!」

この言葉によって、連れていかれた。

 

捕らえられた人の数は10万人を超えた。

この国が大きくとも、かなりの人数だった。

 

ある日、独裁者の演説が行われていた。

そこに眼鏡をかけた一人の老人が壇上に近付く。

そして壇上の前に立ったところで、

色のついたメガネを外し、二人は目を合わせた。

「私の命で治めてくれぬか。」

赤い種族のトップに立っていた老人は

自らの命を差し出すことで解放を求めた。

 

「こいつめ!知ったことか!撃てぇぇぇ!」

バンッ!!

老人はその場で倒れた。

 

この一部始終の映像は国中に流れていた。

 

何をしても無駄だ。

もう生きている価値はない。

赤い瞳たちは、もう怒る気持ちすら湧かなかった。

 

「独裁者め!いい加減にしろ!」

「差別はやめろ!」

「そこまでやるのか!」

「お前が国を出ていけ!」

「私たちは断固闘う!」

 

老人の勇敢な行動を見た国民たちは

各地で立ち上がった。

「疑わしきものは捕らえよ!」

この言葉で捕らえられた者の中には

赤い瞳じゃない者もいた。

その中で起きた老人の行動。

遂に国民は立ち上がったのだ!

 

それからしばらく

独裁者の政権は崩壊し

赤い瞳を含む収容者は全て解放された。

 

すぐに自由が訪れるとは思っていない。

私たちも悪かった。

もう一度・・・もう一度・・・

みんなでやり直そうじゃないか。

私たちも同じ人間だ。

分かり合える日は必ず来る。

 

老人が集会に向かう前に言い残した言葉だ。