彼の名は「吉法師」
そんな彼は幼少期から奇行が目立った。
「俺はこの服が好きなんだ」と
派手で奇抜な服で町を歩く。
軍事力や経済力を持っている寺院。
「これからは新しい時代だ」と破却する。
ある時は、家臣の前で突然踊りだした。
ある時は、食事中に奇声を発した。
ある時は、意味不明な言葉を口にした。
そんな彼の愛読書は兵法書。
夜な夜な熱心に読みながらは
新しい戦術、新しい武器を考える。
そして自ら剣術、弓術、馬術など、
様々な武芸に精通した。
そしてついた呼び名は・・・「うつけ者」
彼の初陣は待ちに待った14歳の時だった。
正直この戦いは、彼には似合わず
劇的なものではなかった。
しかし周りを認めさせるには充分なものだった。
「もっとできる」
その思いを一心に着実に力を付けていく。
そんな彼の父もまた優秀だった。
下級武士であった家系ながらも
経済力と鋭い洞察力で勢力を拡大させた。
強敵相手にも戦い抜く姿を息子たちに見せた。
しかし病には勝てなかった。
葬儀の日、
彼は縄を巻き、髪は茶せんで巻き立てて、
袴も履かずに現れた。
そして焼香のとき。
仏前へ進み出た彼は
抹香をぱっと摑むと、位牌に向けて投げつけた。
周囲は唖然とした後、罵声を浴びせた。
「やはり、うつけだ!」
「なにをする!常識はないのか!」
しかし彼は無言で立ち去った。
この時の、彼の心境は、
どんなものだったのだろうか?
強さを見せるためのもの。
無念の上での悔しさからか。
盛大に開かれたことへの不満か。
こんなことをしている場合ではないと思ったのか。
その答えは彼にしかわからない。
しかし周囲はこうも思った。
「あの人物こそ、国を支配する人なんだ」と。
彼の野望はまだまだ始まったところ。