popoのブログ

超短編(ショートショート)

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

憧れて

幼い頃、まだTVがブラウン管だった頃、 私は画面に一人の女性を観た。 ブロンドヘアの笑顔の絶えない彼女。 映画の中では彼女はお調子者で、お転婆で、 時には泣いたり、大声で笑ったり、とにかく自由な女の子。 それでも魅力がたっぷりで。 映画の中でも数…

変化

「かずひこ!」 息子は私の言葉に反応することなく部屋へと戻っていく。 「ねえ。あなたからも何とか言ってよ。」 「え?何が?」 「ここ最近、かずひこ、食事以外はほとんど部屋にいるのよ。」 「ゲームか何かしてるんだろう。」 夫はいつもこういって誤魔…

絵本

愛する娘を失った。 2年と7か月。 あまりにも短すぎる彼女の人生だった。 突然起きた出来事に、 私は精神を保つのでいっぱいだった。 娘が大好きだった私の絵。 彼女は「ママ。一緒に。描こう。」と 毎日私にクレヨンを渡す。 一緒に描いた彼女の絵は何と…

穏やかな日々

美しい自然に囲まれ、ここでは静かな穏やかな日々が流れている。 村の人々はみんな仲が良く、助け合いながら暮らしていた。 わしはずっと昔からこの村に住んでいる。 最近、自分が歳をとったことを感じることが増えた。 腰の痛み、体力の衰え。 それでもわし…

ジュース

2人の兄妹、レオとサラは学校から帰る途中、 珍しい自販機を見つけた。 「このジュース飲みたい!」サラは一本のジュースを指さした。 「変わったジュースだな。」珍しいジュースが並ぶ自販機を見て、 レオはポケットからお金を出した。 ガタン。「はい。サ…

我が家

「ほら行くぞ!」 俺は息子を抱えて川へと飛び込む。 バシャン!! 冷たくて気持ちいい。 「パパ!もう一回。」 川の水から顔を出した息子が言う。 「よーし。やるか」 「ほらほら。危ないから気を付けてね。」 岸から、テントに入った妻がこちらを見て言う…

駆ける

俺がなぜ陸上を始めたか? それは小学生のころの運動会。 俺は勉強ができるわけでも、明るい性格でもなく、 運動神経が良かったわけでもない。特に何も取り柄はなかった。 人数集めで参加したリレー。誰も期待などしていなかったと思う。 バトンを渡された順…

演者

私は舞台袖でそっと目を閉じる育った環境。感じたこと。今ある環境。感じること。未来の環境。感じたいこと。私の性格。私の生活。現実の私はここに置いて。舞台にでるのは違う私。場面で感じることを私なりの表現で主人公になりすます。同じ舞台に立つ仲間…

求める私

彼の指先が私の感覚を研ぎ澄ます。 腰から背中へ移動する彼の指先。 時に激しく首の後ろを引き寄せる。 私はもう夢中になっている。 彼の口から私の口へ。 柔らかく暖かい。 絡み合う。 彼の首元から香る甘い匂い。 彼の匂いだ。 それがまた私を夢中にさせる…

勝率

箱の中身は開けてみないとわからない。 そして箱は種類は違えど無限にある。 喜びを与えてくれる人もいれば、 悲しみを与えてくる人もいる。 楽しい場面もあれば、辛い場面もある。 嬉しさと悲しさは混在する。 臆病な俺は躊躇していた。 後悔するのが嫌でな…

ポスト

久しぶりに手紙を書いた。 私の字ってこんなだった? 昔はもう少し綺麗に書けた気がした。 そう言えば… 小学校では交換日記なんてやってたな。 昨日の出来事。今日の出来事。 そして何よりも、好きな人のこと。 机の引き出しに入れるとき 緊張したのを忘れて…

出発のとき

私は今、猛烈に興奮している。 私は今、人の多さに驚いている。 「こんなにもたくさんの人が今から海外へ飛び立つのか。」 ここの空港だけで、この時間だけで、この人数。 果たして国内全部でどれ程の数だろう。 大学を卒業して2年。 やっと仕事にも慣れてき…

私の生き方

私は幼い時に母を亡くした。 父は出稼ぎという名で私を捨てた。 私は孤児院に預けられた。 そこは本当に寂しい場所。 でも「負けない!」そう思わせてくれる場所。 みんなで何とか助け合い。 みんなで生きる術を考えた。 私はそこで裁縫を習った。 悲しみを…

実家のばあちゃん

「ばあちゃーん!」車を降りると古びた家の玄関に向かう。ガラガラ「いらっしゃい。」しわくちゃの顔を、さらにくしゃくしゃな笑顔にして迎えるばあちゃん。また少し小さくなったように見える。じいちゃんが他界し、この家には、ばあちゃんひとり。客間も閑…

風のいたずら

大きな公園の芝生を俺は愛犬ラッシュと駆けていた。青い空と白い雲がとても清々しい。何度も芝を行ったり来たり。しばらくして俺は芝生に横たわる。大の字とはまさにこのこと。するとラッシュは上に飛び乗りぺろぺろと顔を舐めてくる。しばらくしてラッシュ…

魂の行き場

生と死の間に広がる謎に満ちた領域、それが「魂の行き場」。 人々はこの場所がどこにあるのか、何を意味しているのかを長い間考え続けてきた。 ある日、私もまた、その謎に心を奪われた。 「魂の行き場は、人々が最も大切にした思い出と繋がる場所だ」と祖父…

欲望

よくぼう 【欲望】 ほしがる心。 不足を感じて、これを満たそうと望む心。 生命がある限りつきまとう。 金・美・食・愛…他にも色々。 手に入れてもまだまだ満足いかない。 もっと…もっと…。 気がつくと周りが見えなくなっていた。 ただ目の前のことに無我夢…

プレーオフ

プレーオフの第3打。私は極限に集中している。ここへ歩く道のりで私は過去を振り返った。あがり症な私。いつも肝心な時に私はチカラを発揮できない。小さな頃から才能あると騒がれて私は多くの人に囲まれた。数多くの期待や夢を私は抱えた。高校総体の優勝が…

おれの出番

夏が始まった。 祭りやフェスなどの野外イベント。様々なイベントが開かれる。年々暑くなる昨今、楽しみを得るのも一苦労だ。 それでも感動を求め、楽しさを求め、夏のイベントに足を運ぶ多くの人。そして俺の出番もやってくる。 この中には保冷材やファン。…

いらっしゃい!

「いらっしゃい!」 ここは小さな焼き鳥屋。 俺は純平。ここの店長。カウンターで焼くのが仕事だ。 「純ちゃん。生ちょうだい」「はいよ」 ここには仕事帰りのサラリーマン。OL。 大学帰りの学生たち。家族に友達。恋人たち。 みんなが集まる。 ほら、カウン…

流されて。

どれだけ時間経ったのだろう。 私が流れ着いた島は人の住んでる気配もない。 私は痛んだ体を何とか起こし島の中腹へと向かった。 海岸沿いは静かに波が押し寄せる。 周りを見渡しても大きな木が見えるばかり。 私は草や木の枝を掻き分けながら更に足を進ませ…

がんばれ!

照り付ける痛いほどの熱い陽射し。 流れ続ける大量の汗。 のどの痛みを忘れるほどの大きな声。 私のいるこの場所から見える 大きなグランドと観客。 闘う選手たちは真っすぐな目でプレーしている。 そこには他のことを考えることもなく ただ真っすぐ野球と向…