popoのブログ

超短編(ショートショート)

絵本

愛する娘を失った。

2年と7か月。

あまりにも短すぎる彼女の人生だった。

突然起きた出来事に、

私は精神を保つのでいっぱいだった。

娘が大好きだった私の絵。

彼女は「ママ。一緒に。描こう。」と

毎日私にクレヨンを渡す。

一緒に描いた彼女の絵は何とも独創的だった。

私の絵とは似ても似つかぬ絵だった。

今私は彼女の描いた絵を真似てみる。

何を描いたのだろう。

何を描きたかったのだろう。

そう考えながらクレヨンを走らせる。

するとひとつのキャラクターが見えてきた。

ウサギなのかネコなのか。はたまた、ひとなのか。

ひとの姿をした生きもの。

彼女の絵には、いつもこのキャラクターが描かれていた。

彼女の絵は、このキャラクターがいつも笑っていた。

私はそれから毎日、そのキャラクターを描き続けた。

一か月が経ち、私は言葉を付け加えた。

「ありがとう。」から始まる物語。

「さようなら。」で終わる物語。

私から彼女へのメッセージになった。

この絵本と共に、私は鮮明に娘を思い出す。

 

数年後のとある学校の放課後。

二人の生徒が話している。

「いつも読んでるこの本はなに?」

「これ?」

本を見つめる生徒。

「これはね・・・」

「私の。私のおねえちゃんなの。」

彼女は笑顔でそう答える。