popoのブログ

超短編(ショートショート)

庶民の声

舞台は、高度経済成長期の日本。

表向きでは、

人々の生活は豊かになりつつあるように見えたが、

実際は、物価の高騰が続き社会問題となっていた。

特に、食料品の中でも米の価格が高騰し、

庶民の生活を圧迫していたのだ。

 

「おとうちゃん。今日も麦飯なの?」

 

一郎と花は、毎日の食料費の高騰に困り果てていた。

特に米の価格が上がり、食卓から白米が消え、

代わりに麦飯が出ることが増えた。

花は、子どもたちの栄養が心配で、

夜も眠れない日々を送っていた。

 

そんなある日、町にふたつの噂が広まった。

 

「地主の大川庄兵衛が、大量の米を買い占めて隠しているらしい。

そして、高値で売りつけるつもりだ」

 

「山田屋の店主が米を船で運び出しているらしい。」と。

 

一郎は、この噂を聞き、怒りを覚えた。

懸命に働いても、生活が苦しいのは、自分たちのせいではない。

 

「独占する者たちが原因ではないか!」

 

町の人々は、自分たちで米を手に入れようと、必死になった。

しかし、米はどこにもなく、手に入れることは困難だった。

「あった!」と思えば、それは庶民の生活を圧迫するほどの値段だった。

 

そしてついには、暴徒が大川庄兵衛の家を襲撃する事件まで起こった。

 

一郎も、我慢の限界を感じていた。

彼は、他の労働者たちとともに、町役場へ抗議に行った。

しかし、役人たちは、大川庄兵衛の味方をしているようだった。

 

「なぜですか!?」「庶民の生活はどうなるんですか?」

「子どもたちは?」「どうか、どうか、助けてください!」

 

「ええい!うるさい!どうしようもないだろう。」

「しっかり働いて稼げ!」「自分で何とかしろ!」

 

「お願いです!私たちの声を聞いてください!」

 

役人たちは耳を傾けることをしなかった。

そう。役人たちは、自分たちだけは…と

裏で米を受け取っていたからなのだ。

 

絶望感に包まれた一郎だったが、

それでも彼は、諦めずに活動を続けた。

新聞社に手紙を書いたり、演説会を開いたりした。

 

そして、ついに、その声は政府に届いた。

そして国が事態の収拾に乗り出したのだ。

 

米の価格統制を行い、買い占めを禁止。

また、勝手に運び出すことを禁じた。

さらに、米の生産や労働者の賃金を増やすための対策も講じられた。

 

それから少しずつ、町に平穏が戻ってきた。

 

米の生産量も増え、労働者の賃金も増えた。

一郎と花の生活も、以前よりは楽になった。

 

しかし、まだまだ豊かな生活とは言えない。

 

一郎は、この経験を通して、社会の不平等を深く認識した。

そして、もっと公正な社会を作るために、

何かできることはないかと考え始めた。

これから先の社会の為に・・・