ぼくはTVで現実を知った。
ぼくが生活しているこの町が
どこにでもあるのだと思っていた。
でもTVに映っていたのは
はだしで歩く人たち。
赤ちゃんを抱えるまだ大人じゃない人。
ボロボロの服を着たぼくと同じくらいの子。
ぼくの町にあるような建物はなかった。
それでもTVのむこうの人たちは
笑っていた。
ぼくはいつも走ったり、すべり台に上ったり、
大きな声を出して、動き回っている。
でもTVに映っていたのは
ぼくと同じくらいの子が、上手く話せない姿。
歩くことが出来なくて、車いすにのった子。
からだに不自由がある人たち。
それでもTVのむこうの人たちは
笑っていた。
ぼくは、お小遣いから1円。5円。10円。を
少しずつママの用意してくれた瓶に入れる。
これを一年に一回大きな公園のお祭りに持っていく。
公園には黄色い服着たお兄さんやお姉さんがいる。
ぼくが瓶を渡すと、「ありがとう」と
握手をしてくれる。
ママにも「よかったね」って言われる。
そして何よりも、ぼくのお金は少しだけど
TVに映ったみんなに届くことがうれしい。
今は遠くにいる人たちだけど、いつか一緒に笑って遊びたい。
今は不自由な人たちだけど、いつか一緒に笑って遊びたい。
大丈夫。今は何でも、できるようになってきている。
ぼくは今日も瓶にお金を入れる。
この想いが届きますように。
