私はひとりの人を愛した。
私が落ち込んでいると寄り添ってくれて、私がはしゃいでいると一緒に楽しんでくれて。
一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に怒って、一緒に喜んで。
「幸せだったあ。」
いつも肝心な時、必ずその人がそばに居てくれた。
私の支え。私にとって唯一の存在。
でも、その人には守るべきものは他にあって、
私はその人の隙間に居たに過ぎなかった。
「一緒にはなれない」
その一言が。その一言が重すぎて。私はその人と別れた。
それから数日後、私は体調を崩した。
こんなこと現実にあるの?
私はドラマの中だけの話だと思っていた。
妊娠3か月。
急にのしかかる現実。誰にも言えずに考えた。何度も何度も考えた。
日が経つにつれ、私は泣く日が増えてきた。もうメンタルもボロボロに。
そんな時、「産みなさい」その一言が私を救ってくれた。その一言が私を“ママ”にしてくれた。
芽生えた私の自覚と覚悟。
それからは生まれてくる我が子のために無我夢中で頑張った。
泣いた日だってある。悲しんだ日だってある。
でも同じように笑った日だってある。喜んだ日だってある。
そして辛かったことを全て忘れさせてくれる程、幸せな瞬間を迎える。
私は我が子に希望(のぞみ)と名付けた。
上手くおっぱいが飲めない希望。上手くゲップができない希望。上手く歩くことができない希望。上手くお箸が持てない希望。上手く自転車に乗れない希望。上手く逆上がりできない希望。
それでも一生懸命生きる姿に、私は何度も心をうたれた。
ある日、反抗期がやってきた。ある日、思春期がやってきた。
「うるさい」と言われ落ち込んだ日。「わかってるから」と言われ落ち込んだ日。
「くどい」と言われ落ち込んだ日。どの日もあなたを愛してるのに。
「ありがとう」と言われた日。私は涙が止まらない。
ある日、希望は家を出る。「いってらっしゃい」と送り出すも、私は涙が止まらない。
いつか来るとわかっていたけど、やっぱり涙が止まらない。
私と希望。
一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に怒って、一緒に喜んで。
私の支え。
私はたったひとりの我が子をずっとずっと愛してる。