popoのブログ

超短編(ショートショート)

私の担当

ある日、私は一軒の美容院を訪れた。

「レイヤー多めに。前髪はこのくらいに。」

「かしこまりました。」

笑顔の若い男性は手際よくカットに入った。

その日、私は仕事で少しイライラしていた。

彼は口数が少なかった。

カットが終わり、カラーに入る。

「これどうぞ。」

彼は一冊の雑誌を持ってきた。

『世界の絶景」

 

一か月後、私は再び同じ美容院を訪れた。

「3センチくらい切ろうかなあ。切りすぎかなあ」

悩んでいた私だが、明日は友人とコンサートに行く。

その予定に私は浮かれていた。

彼は少しずつ切りながら鏡を見ていた。

この前よりちょっとクールな彼。

カットが終わり、カラーに入る。

「これどうぞ。」

彼は一冊の雑誌を持ってきた。

『友達と行く素敵なディナー』

 

また一か月が経過し、私は同じ美容院を訪れた。

「前回みたいな感じで。お願いします。」

その日の私は落ち込んでいた。

「好きな芸人とかいますか?」

彼は、今までにないくらい冗舌だった。

そして、いつも以上に笑顔だった。

カットが終わり、カラーに入る。

「これどうぞ。」

彼はタブレットを持ってきた。

『絶対に笑ってはいけない・・・。』

 

私はこの店が大好き!

また一か月後が楽しみ。