popoのブログ

超短編(ショートショート)

ふたり

私の名前はあずさ。ごく普通のOL。

でも最近は生活環境も変わり同棲している彼とは

すれ違いの日々を過ごす。

朝の出勤時間も違えば、帰りも彼は残業ばかり。

疲れた彼とは会話も弾まない。

休日も最近はバラバラで、まともに話もしてないなあ。

 

「私達行けなくなったんだよね。使って。」

そう友人から渡されたミュージカルの公演チケット。

彼と付き合うきっかけは趣味が同じだったこと。

宝塚や劇団四季

付き合いたての頃は、一緒に頻繁に観に行った。

 

私はあるミュージカルを思い出す。

女優を目指す彼女と、ピアニストを目指す彼の物語。

夜景の見える丘から始まった恋。

オーディションに落ちる彼女と、バンドで成功する彼。

互いに深まる溝。

そして訪れた別れの時。

数年後、互いに夢を叶えたふたり。

それぞれ家庭を持ち、幸せに暮らすふたり。

ある日、彼女の訪れた店。

突如流れるあの時の曲。

そう。ふたりが初めて出会った時の曲。

奇しくもその店は彼の店だった。

“あったかもしれない二人の理想と未来”

彼女は曲が終わると、頷き、笑みを浮かべ

その場を立ち去った。

 

久しぶりの彼とのデート。

「楽しかったぁ。」

「そうだな。悪かったな最近。」

「ううん。いいの。お互い忙しいから。

 でも、たまにはこうやってお出掛けしようね。」

「そうだな。なあ。あずさ。

ずっといいふたりでいような。」

「うん!」