昔ながらの大きな家で、
陽菜は一人静かに本を読んでいた。
窓の外には、夕日が沈み、部屋は薄暗くなってきた。
ふと、背中に何かを感じた陽菜は振り向くが、何もいない。
「おばあちゃん…」
思わず、おばあちゃんの名前を呟く陽菜。
陽菜のおばあちゃんは、とても優しかった。
毎朝庭で花に水をやり、孫である陽菜に
愛情たっぷりの手料理を作ってくれた。
陽菜は、おばあちゃんの大きな愛情に包まれ、
おばあちゃんもまた、いつも笑顔でした。
しかし、3年前。
そんなおばちゃんが永眠した。
陽菜は最近、おばあちゃんの気配を感じることが多く、
まるでそばにいるような気がしていた。
ある夜、陽菜は悪夢にうなされていた。
突然、部屋が暗くなり、何かが近づいてくる。
恐怖に震える陽菜だった。
その時、温かい手が彼女の頭を撫でた。
「大丈夫だよ、ひなちゃん」
それは、おばあちゃんの優しい声だった。
ハッと目を覚ました陽菜は、部屋を見渡す。
でも誰もいないことに気づき、再び寂しさに包まれる。
それからというもの、陽菜は不思議な出来事を何度も経験する。
本を開くと、いつもおばあちゃんが好きなページが開かれていたり、
困っている時に、おばあちゃんの声を心の中で聞いたりする。
「ゆっくり深呼吸して、ひなちゃん」
陽菜は、おばあちゃんが幽霊となって、
自分を見守ってくれていることに気づいた。
そして、おばあちゃんの愛を感じ、生きる喜びを見つける。
「おばあちゃん、陽菜がんばってみるね」
卒業式の日、陽菜は壇上に立ち、
自分の未来への決意を述べた。
「私は、大好きだったおばあちゃんのようになります」
決意を述べた陽菜が顔を上げ、壇上から遠くを見る。
そのときだった。会場の一番後ろで、
おばあちゃんが微笑んでいるのが見えた気がした。
卒業後、陽菜は新しい道を歩み始めた。
家族とは遠くに離れて暮らすことになったが、
おばあちゃんの存在は、いつも陽菜の心の支えになっていた。
「いいの。いいの。しょうがないじゃない」
陽菜が失敗するたびに、おばあちゃんの声がする。
その声を聞くたびに、陽菜の心は軽くなった。
時が経ち、陽菜も大人になった。
ある日、実家に戻った陽菜は、おばあちゃんの部屋を訪れた。
窓から差し込む陽光の中、部屋には懐かしい香りが漂っていた。
「おばあちゃん、いつもありがとう」
静かにそう呟くと、陽菜の心は温かい光で満たされた。
おばあちゃんの愛は、永遠に陽菜の心に生き続けている。