popoのブログ

超短編(ショートショート)

ハヤシライス

ソファに腰掛け、窓の外をぼんやりと眺めていた。

午後の柔らかな日差しが部屋に差し込み、

どこか懐かしい温もりに包まれているような気がした。

 

冷蔵庫から冷えたジュースを取り出し、一口飲む。

甘い香りが口の中に広がり、子供の頃、

大好きなアニメを見ながら飲んでいた

オレンジジュースを思い出した。

 

ふと、キッチンから漂ってくる懐かしい香りが鼻をくすぐる。

ハヤシライスの匂いだ。

 

「ちょうど出来たところよ」

 

そう言ってお母さんがキッチンから出てきた。

大きなお皿に盛られたハヤシライスは、

子供の頃に食べたものより

少し大人っぽい盛り付けになっている。

 

「お母さん、ありがとう」

 

そう言うと、お母さんはにこやかに微笑んだ。

 

「どういたしまして。さあどうぞ」

 

スプーンですくって一口食べる。

デミグラスソースの濃厚な味わいが口の中に広がり、

子供の頃の記憶が蘇ってくる。

 

「美味しい」

 

そう呟くと、お母さんはまた微笑んだ。

 

「よかった。たくさん食べてね」

 

ハヤシライスを食べながら、色々なことを思い出した。

 

子供の頃、カレーライスが食べられなくて

いつも寂しい思いをしていたこと。

そんな僕のために、お母さんが

いつも笑顔でハヤシライスを作ってくれたこと。

 

あの頃のハヤシライスは、

ただお腹を満たすだけの食事ではなく、

お母さんの愛情がたっぷり詰まった特別なものだった。

 

20歳になった今でも、

ハヤシライスを食べるたびに、

子供の頃の記憶がよみがえり、心が温まる。

 

「お母さん、いつもありがとう」

 

心の中でそう呟きながら、

残りのハヤシライスをゆっくりと味わった。