popoのブログ

超短編(ショートショート)

訪問者

ゲームクリエイターの田中は、

新作ホラーゲームの開発に追われていた。

締め切りが迫り、連日徹夜で作業を続けていた。

 

ある日、彼は奇妙な音で目を覚ました。

 

「コンコン、コンコン」

 

それは、彼の部屋のドアをノックする音だった。

深夜2時。誰も訪れるはずがない時間だ。

 

田中は恐る恐るドアに近づき、耳を澄ませた。

しかし、ドアの向こう側からは何も聞こえない。

「気のせいか?」

そう思い、もう一度ベッドに戻ろうとした

その時、再びノック音が聞こえた。

 

「コンコン、コンコン」

 

今度は、明らかに以前よりも音が大きかった。

田中は心臓が激しく鼓動するのを感じながら、

ドアノブに手を伸ばした。

 

ゆっくりとドアを開け、田中は暗い廊下に目を凝らした。

しかし、そこには誰もいない。

「誰だ?」

田中は恐る恐る声を発したが、返答はなかった。

静寂だけが彼の言葉を包み込む。

 

不審に思いながら、田中は部屋を出た。

廊下は薄暗い照明に照らされ、壁には奇妙な影が映っていた。

 

田中は、足を進めた。

しかし、誰もいない。

 

「一体、誰が…」

 

田中は背筋にぞっとするような悪寒を感じた。

 

部屋に戻り、田中は再びゲームの制作に取り掛かった。

しかし、彼の頭の中は、さっきの音でいっぱいだった。

「集中できない…」

田中はため息をつき、気分転換にゲームをプレイすることにした。

 

彼がプレイしたのは、自分が開発中のホラーゲームだった。

ゲーム内の世界は、暗く陰鬱な雰囲気に包まれていた。

 

田中はゲームを進めていくうちに、奇妙な感覚に襲われた。

それは、ゲームの世界が、現実世界と繋がっているような感覚だった。

 

ゲーム内の画面に映る風景は、さっき自分が見た廊下と酷似していた。

そして、ゲーム内のキャラクターが話す言葉は、

まるで田中自身に語りかけているようだった。

 

田中は恐怖に支配され、ゲームを中止した。

しかし、彼の悪夢は終わっていなかった。

 

次の夜、田中は再びあのノック音を耳にした。

そして、ドアを開けたら、

そこにはゲーム内のキャラクターが立っていた。

 

キャラクターは、田中をじっと見つめ、不気味な笑みを浮かべた。

 

「ようこそ、私の世界へ…」

 

田中は絶叫した瞬間、

目を覚ました。

しかし、彼の耳には、まだあのノック音が聞こえていた。

 

それからというもの、

田中は毎晩あのノック音に悩まされるようになった。

そして、彼の精神状態は徐々に悪化していく。

 

ゲームの開発も中止せざるを得なくなり、

田中は引きこもり生活を送るようになった。

 

彼の部屋は、暗闇に包まれ、壁には奇妙な影が映っていた。

そして、彼の耳には、常にあのノック音が聞こえていた。

 

田中は、いつの日かあのノック音から解放されるのだろうか。

 

数年後、

田中の部屋は依然として暗闇に包まれたままだった。

 

一人のゲームクリエイターが田中の部屋を訪れた。

彼は、田中の遺作となるゲームを完成させるために。

 

ゲームクリエイターは、田中の部屋に残された資料を調べ始めた。

そして、彼は奇妙な事実を発見する。

 

田中が開発していたホラーゲームの内容は、

彼の体験と酷似していた。

まるで、彼が実際に体験した恐怖を

ゲームに落とし込んだかのようだった。

 

ゲームクリエイターは、田中の体験が現実なのか、

それとも彼の妄想なのか、判断することができなかった。

しかし、彼は一つだけ確信していた。

 

それは、田中が計り知れない恐怖を体験したということ。

そして、その恐怖は、彼の命を奪ったということだった。

 

ゲームクリエイターは、田中の遺作となるゲームを完成させることを決意する。

そして、彼はゲームに込めた田中のメッセージを世界に伝えようと誓った。

 

それは、

 

「ようこそ、私の世界へ…」

 

没頭するがあまり、現実から引き込まれることがある。

というメッセージだった。