popoのブログ

超短編(ショートショート)

記憶喪失

東京湾に浮かぶ豪華客船「クイーン」

その船上で、一人の男が目を覚ました。

彼は記憶喪失だった。

名前も、職業も、何も思い出せない。

唯一の手がかりは、ポケットに入っていた

「小田」という名刺と、

ホテルのスイートルームの鍵だった。

 

男は名刺の住所を頼りに、ホテルを訪れる。

「今日はどうしたんですか?」

「あ。ああ。ごめん。記憶がないんだ。」

従業員の女性と話を始める。

そこで彼は、自分が「ホテル王」であることを知る。

しかし、記憶喪失のため、彼は自分の財産や権力、

そして敵対者についても何もわからない。

「ああ。ごめん。記憶にないんだ。」

 

記憶を取り戻すため、小田はホテルの調査を始める。

しかし、彼の周りには敵が潜んでいた。

ライバルホテルチェーンの社長、裏社会のボス、

そしてかつて小田に裏切られた部下たち。

彼らは小田の記憶喪失を利用して、

彼のホテルを奪おうと企んでいた。

 

ホテルを巡る争いが激化する中、

小田は徐々に記憶を取り戻し始める。

「かまわん!やれ!」

彼はかつて、ライバルとの競争に勝ち抜くために、

様々な不正行為を行っていたことを思い出す。

 

「そうか。結婚したのか。おめでとう!

 この最高のホテルで盛大に挙式をしよう!

 費用は祝儀で全部出してやる!」

同時に彼は、自分のホテルを愛し、

従業員のために尽くしていたことも思い出していく。

 

ついに、小田は全ての記憶を取り戻す。

そして、彼は自分が過去に犯した罪を償うことを決意する。

「社長…。」「いいんだ。これでいいんだ。」

 

彼は記者会見を開き、不正行為を告白した。

世間からの批判は避けられなかったが、

同時に彼の誠実さに心を打たれる人々も多かった。

 

記憶を取り戻し、罪を償った小田は、

再びホテル王として立ち上がる。

彼は不正を根絶し、従業員と共にホテルを再建していく。

そして、彼のホテルは再び人々から愛される場所となる。

 

数年後、小田は自叙伝を出版する。

その中で彼は、記憶喪失の経験が自分の人生を

大きく変えたと語っている。

記憶を失ったことで、彼は自分が

本当に大切なものを見つけることができたのだ。

 

「記憶を失うことは怖かった。

しかし、そのおかげで私は大切なものを思い出せた。

それは、金や権力ではなく、人との信頼関係であり、

自分が愛する仕事である。」