popoのブログ

超短編(ショートショート)

キャンドルの火

薄暗い部屋の片隅に、

古びた木製のテーブルと

背もたれのない椅子。

その上には、使い古された

白いレースクロスと、

一輪挿しに活けられた可憐なバラの花。

そして、その中央に

静かに佇む一本のキャンドル。

 

柔らかな炎の揺らめきは、

まるで少女の心を映す鏡のようだった。

 

彼女の瞳には、

深い悲しみが宿っていた。

かつては輝いていた瞳も、

今は失意と絶望に曇り、

涙で濡れていた。

 

少女の名前はユイ。17歳。

彼女は幼い頃から病弱で、

学校にも通えず、

ほとんどの時間自宅で過ごしていた。

 

唯一の楽しみは、

窓辺から眺める景色と、

本を読むことだった。

そして、何よりも

心を癒してくれたのが、

祖母との時間だった。

 

祖母はいつも優しく、

ユイに様々なことを教えてくれた。

物語、詩、音楽、

そして人生の大切さ。

 

しかし、数ヶ月前、

祖母は静かに息を引き取った。

ユイにとって、かけがえのない存在だった

祖母を失い、彼女は深い悲しみに包まれた。

 

生きる希望を失いかけていたユイ。

そんなある夜、彼女はふと

祖母が残してくれた古い箱を見つけた。

 

箱を開けると、中にはたくさんの手紙と、

一枚の写真が納められていた。

写真には、若い頃の祖母と、一人の男性が写っていた。

 

手紙には、祖母と男性の

切ない愛の物語が綴られていた。

二人は深い愛情で結ばれていたが、

様々な困難を乗り越えられず、

結ばれることはなかった。

 

しかし、祖母は最後まで男性への愛を持ち続け、

彼のことを想いながら生きてきた。

 

手紙を読み終えたユイは、

初めて自分が抱えていた

深い悲しみと絶望の正体を知った。

 

それは、祖母を失った悲しみだけでなく、

自分自身の孤独と、

生きる意味を見失った喪失感だった。

 

しかし、同時にユイは、

祖母が残してくれた強さを感じた。

どんな困難にも負けず、

愛を貫き通した祖母の生き様は、

ユイに生きる希望を与えてくれた。

 

ユイは決心した。

祖母のように、強く生きることを。

そして、いつかきっと、

自分の人生を見つけることを。

 

ユイはそっと立ち上がり、

キャンドルに火を灯した。

炎の揺らめきを見つめながら、

ユイは静かに呟いた。

 

「ありがとう、おばあちゃん。私は大丈夫。

必ず強くなって、あなたのような素敵な女性になる。」

 

部屋に再び灯った灯火は、

ユイの決意と希望の象徴だった。

それは、どんな闇も照らすことができる、

小さいけれど力強い光だった。