popoのブログ

超短編(ショートショート)

一通の手紙

深夜のラジオ番組を担当していた私は、

いつも通り番組を進めていた。

 

深夜1時過ぎ

一通の手紙を読み上げた。

 

それは数十年前の戦争体験を語る

一人の女性からの手紙だった。

戦争で家族を失い、絶望の淵に立たされた女性。

しかし、ある日どこからともなく

流れていたラジオ番組。

そして流れてきた音楽。

 

「意味なんかなくても 歌えよ

 誰も聞いてなくても 話せよ

 自分のために

 今日よりマシな自分になる。

 それだけをずっと願っていたんだろう」

 

この歌に生きるチカラをもらった。

という内容だった。

 

手紙を読み終えた私は、言葉に詰まった。

戦争の悲惨さ、そして音楽の持つ力。

そして、それを通して繋がった人生。

その重さに、胸が熱くなった。

 

同時に私はラジオを通して、

戦争の悲惨さを伝え、

平和の大切さを訴えることができた。

 

番組終了後、手紙をくれた女性から電話があった。

女性は、私の声が

当時のラジオ番組のパーソナリティの

声に似ていることに驚いたと話した。

 

「あなたの話で、声で、あの時の気持ちを

思い出しました。本当にありがとう。」と。

 

電話越しに聞こえる女性の優しい声に、

私は思わず涙をこぼした。

ラジオを通して、誰かの心に触れることができた。

その喜びを、全身で感じた。

 

「ううん。私こそありがとうございました。」

 

私は、この日

ラジオパーソナリティという仕事に

誇りを持てた。