popoのブログ

超短編(ショートショート)

青春と希望の街

活気に満ちた若者と

流行の最先端をいく街。

IT企業も集まり、情報の発信源になっている。

東京の真ん中、渋谷。

 

私は久しぶりにこの街に来た。

かつては私も夢をみた。

悔しさと喜びをこの街で味わった。

上手くいかない人生を、

たくさんの人ごみの中で孤独を感じた夜。

浴びるように酒を飲み、朝まで明かした

喜びに満ちた、楽しかったあの日。

 

私の青春はこの街にあった。

 

スクランブル交差点。

この感じが懐かしい。

多くの若者が笑顔で信号を待っている。

多くの外国人が期待で胸を膨らませている。

 

信号が変わると同時に

たくさんの人が歩き出す。

一体何人の人がこの交差点を渡るのだろう。

そんなことを思いながら足を進める。

 

ちょうど中央に近付いた時だった。

ひとりの女性が転んでしまった。

しかし周囲の人たちは、足を止めることもなく

そのまま何もなかったように立ち去る。

 

「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

私は女性の手を取って起こす。

「あ、ありがとうございます。」

「ゆっくりでいいですよ。」

私は一目で彼女が妊婦だとわかった。

 

「少し休憩しませんか?」

私は彼女と近くのカフェに入った。

 

「本当にありがとございます。」

女性はひとり暮らしの中、もうすぐ出産を迎えるという。

 

彼女の苦労と「負けない」という熱意のようなものを感じた。

 

「助けていただいて、本当に良かったです。」

「何事もなさそうで良かったです。頑張ってください。」

 

そう言った時、二人の若者が寄ってきた。

「さっきは大丈夫でしたか?」

「何かできることないですか?」

彼らも女性が倒れたのを見ていたようだった。

 

「ありがとうございます。大丈夫です。

この街の人は温かいのですね。

私は夢を追って田舎から出てきました。

友達もいない中、必死で頑張ったのに、

結局シングルマザー。

何やってんだ。って自分によく言うんです。」

 

「でも今日は何だか嬉しいです。

この街の人は冷たいって、どこかで思っていたんです。

でも違った。それを知って幸せです。

私、頑張ります。ありがとうございます。」

 

私は小さな優しさが誰かの心を救うこともあるんだ。

そう思った。