popoのブログ

超短編(ショートショート)

最高の私で

輝く光と、多くの誘惑が、ここに人々を引き寄せる。

着物を着た女性。タクシーから降りる女性。マスクをした女性。

スウェット姿の若い男性。仕事帰りの働く男性。ちょっと強面の男性。

ダメとわかっていても声をかける男性。居酒屋から出てくる男女。

料亭からは完璧で綺麗な女性と、ゆとりのある紳士的な男性。

この街の始まりは今から。

ここで働くみんなは、自信と輝きに満ちている。

私たちは、全力で人々を楽しませる。

私たちは、全力で人々をおもてなす。

綺麗なドレスに、綺麗なネイル。ヘアースタイル。化粧。

どれをとっても最上級の私がいる。

周りには贅沢に映るかもしれない。周りにはわがままに映るかもしれない。

でもその一方で、時には厳しい状況がやってくる。

プレッシャーに押しつぶされそうになることもある。

激しいストレス。激しくぶつかり合う感情。

私たちは、魅力や外見にフォーカスが置かれがち。

でも内面も同じくらい重要なの。

心身ぶっ壊れちゃうこともある。

バランスを保つのって、とても大変。

それでも私は私なりの夢と目標があるの。

何で夜の仕事なのって?

私はこの仕事に誇りがある。

私と出会った人に楽しい時間を与えられる。

私と出会った人に喜びを与えられる。

私の笑顔や気配りが。私の最高につまらない話が。

最高すぎて逆にウケる。

そうやって私は毎日、特別な瞬間を過ごしてもらえるよう心掛けている。

日常に疲れた時に寄り添える人でいたい。

特別な日を、より特別な日にしてもらいたい。

キレイごとだけじゃなくて、もちろん私もその時間が楽しい。

私だけじゃないの。私も。みんなも。

だから好き。この仕事が。この場所が。

たくさんの誘惑と、たくさんの欲望が、ここにはある。

争いもある。お金もかかる。

それでも私たちはここにいる。

たくさんの“特別”と一緒に。