popoのブログ

超短編(ショートショート)

役目を終えるその日まで

私は、いつもあなたといます。

私は、様々な物を詰め込まれています。

筆記用具、財布、スマホ、そして…あなたの思い出。

私は、あなたの日常生活を支えています。

学校へ行くとき、仕事に行くとき、遊びに行くとき。

私は、いつもあなたのそばにいます。

たまには家でお留守番。そんな日もあなたの帰りを待っています。

時にあなたは怒って私を叩きつけます。

時にあなたは落胆して私を置き去りにします。

時にあなたは嬉しさからか私を綺麗にしてくれます。

そういった毎日を私はあなたと一緒にいます。

あなたが旅行に出かけるときも私を大事にしてくれます。

あなたが愛する人と会う時も私を大事にしてくれます。

私はあなたの喜びや悲しみ、怒り、そして、愛情を、いつも見ています。

それが私の幸せなのです。

あなたが無理に物を詰め込もうとするときも、私もその気持ちに応えようと、目いっぱい膨れてみます。するとあなたは安堵します。

私の中にあるものは、あなたの大切な一つ一つ。

だから私も大切に守ります。

時が経ち、私は留守番の日々を迎えました。

昨日も。今日も。この前も。

ずっと暗い部屋の中で私はあなたの帰りを待ちます。

あなたはもしかしたら、私のことを忘れてしまったのかもしれません。

あなたはもしかしたら、私のことを必要としなくなったのかもしれません。

それでも私はあなたに捨てられるその日まで、

またいつか一緒にお出かけできる日を夢みています。

私はかばん。

あなたの大切なものを守るもの。