popoのブログ

超短編(ショートショート)

憧れて

幼い頃、まだTVがブラウン管だった頃、

私は画面に一人の女性を観た。

ブロンドヘアの笑顔の絶えない彼女。

映画の中では彼女はお調子者で、お転婆で、

時には泣いたり、大声で笑ったり、とにかく自由な女の子。

それでも魅力がたっぷりで。

映画の中でも数々の男性に恋心を抱かれていた。

「彼女みたいになりたい!」

私が初めて憧れを感じた瞬間だった。

彼女のいる国は楽しいのだろう。

私は英会話を勉強した。

彼女は自分のことが大好きなのだろう。

私は私自身を磨いた。

学校に行きながらバイトをしてお金を貯めた。

親にも時間をかけて説得した。

「あなたがやりたいように生きなさい。」

そう言ってくれた母の言葉が

「あなたがやりたいように行きなさい。」

と私には聞こえ、決意が更に固まった。

初めて彼女を観てから、私はその映画を何度も観た。

他の映画も、彼女が出ているものは全て観た。

どの映画を観ても彼女は無邪気な女の子。

いつも元気に笑っている。

今では彼女のしぐさも表情も私の頭に刻まれている。

そして頭に浮かべるだけで、私はたくさんの元気と勇気をもらった。

「ありがとう。」

「あなたに出会えてよかった。」

私は最後の服をスーツケースにしまった。

空港に着き、出発の時。

「いってらっしゃい」

「うん!楽しんでくるね!」

私は最高の笑顔をしている。