私は人生の岐路に立っていた。
離婚の痛みが心を抉り、自信を失ってしまった。
私の妻は子供を引き取り、18歳になるまでひとりで育てた。
離婚当時、子供はまだ3歳。
私は自分自身の情けなさと、自分がしっかりした人間ではないと自信を失い、妻や子供から隠れるように生活をし、子供に会おうとする勇気を持てなかった。
たまに送られてくる妻からの子供の写真。
次第に送られなくなった子供の写真。
私は幼い頃の子供の写真を見ては、成長を静かに見守っていた。
私の胸にはずっと愛する子供への想いが深く根付いていた。
ある日、私はブログを開設することにした。
心の中で繰り広げられる複雑な思いを言葉にしたかった。
私の離婚についてや、今の状況。その後の感情などリアルに思っていることを言葉にしたかった。
ブログは少しずつだが読者が増えた。
そして中にはメッセージをくれる人もいた。
「思い切って会ってみたら。」ある読者からのメッセージだった。
私は唐突に妻と子供の住む場所へ向かった。
実際は当時住んでいる場所へ向かった。まだそこに居るのかもわからないまま。
「まだここに住んでいるのか。」私は外から家を眺める。
心の中では「ごめんな。」「ごめん。」と繰り返していた。
すると家からゴミを出すために妻が出てきた。
目が合ってしまった。
「あなた・・・あなたなの?」
思わず私の口から出た言葉は、やっぱり「ごめん。」という言葉だった。
しばらくの沈黙の後、「中に入ったら」と妻が言う。私は何だか恐る恐る家へと入った。
リビングには子供の写真が成長と共に飾られていた。
「もう18よ。大きくなったでしょう。」とお茶が出てくる。
「これは?」私はリビングに置かれた一台のPCが目に入った。
「あの子、最近はずっとスマホかパソコン触ってるのよ。」
妻がパソコンを起動させる。「なんでもあの子。最近この話ばかりするの。」
パソコンに映しだされたのは、『私のブログ』だった。
「これ。僕のことなんじゃないかって、あの子言うのよ。」
私は驚きと同時に涙がこぼれ落ちた。
「そんなはずないのにね。なんだか重なるみたい。」
もう私はどうにかなってしまいそうだった。
私の。自分の想いが届いた。と思える瞬間だった。
時に人生は困難が立ちはだかり、自信を奪ってしまう瞬間もある。
しかし、希望の光がさすこともある。人の想いは大切だと私は知った。
こんな奇跡は少ないかもしれない。
でも、もし今ブログを書いているあなたが同じ状況にいたら、その想いを持ち続けていたら。
そしてある時、行動に移す勇気が出たら、いつか届く違った奇跡があるかもしれない。