popoのブログ

超短編(ショートショート)

激しい鼓動

俺はあまり緊張しないタイプだ。

とばかり思っていた。

そんな俺は今震えが止まらない。

扉を入り、今日から正式に家族になる妻を待つ。

教会の前に立ったタキシードを着た俺は

半身振り返りながら、その扉が開かれるのを待っていた。

 

讃美歌と共に、妻とお父さんが入ってきた。

温かい拍手も俺の鼓動は激しさを増す。

「よろしくな」

そう言って妻の手が俺の手に渡る。

俺の緊張は更に増した。

 

周りの祝福の声や拍手は全く入ってこない。

俺の手はすごく震えていた。

ギュッ。

隣を見ると妻が微笑んだ。

「大丈夫」

小声で言う妻の言葉が聞こえた。

少しほっとした。

それでも震えは止まらない。

落ち着け。落ち着け。と

自分に言い聞かせる。

 

気が付くと、誓いのキスの時間。

妻のベールアップする俺の手は

恥ずかしいくらいに揺れている。

現れた妻の顔は

俺の緊張する様子に、笑っていた。

 

その笑顔が何とも素敵だった。美しかった。

「一生大切にする。この笑顔のためにも。」

俺はとても愛おしく

緊張が解けたように妻に夢中になり

キスをした。