popoのブログ

超短編(ショートショート)

ファイト!

体も心も疲れた毎日を送る私。

今日は何もない、久しぶりの休養日。

のはずだった。

 

「明日は来れる?」と母からの連絡。

 

一人暮らしをする際に、

「毎月一度は顔出すね。」

そう言って家を出た私は、

連絡が来ると行かなきゃ。という気持ちになる。

 

「わかった。行くよ。」

 

こうして私の休養日は実家に帰る予定に変わった。

 

「ただいまー」

「おかえり!元気してた?」

その一言が・・・なぜか重い。

 

「今日は夜ご飯食べていくでしょ?」

私は早く帰ってゆっくりしたい。

でも言葉にできず、「うん。」と答える。

 

私はソファに横になりスマホをいじる。

ニュースやSNSを見て

時折、声をかけてくる母の言葉に返事をする程度。

 

一時間を長く感じる。

「何か足りないものはない?」

「うん。とくにないよ。」

「シャンプーは?洗剤は?」

「大丈夫。あるよ。」

「お米はある?」

「もう!大丈夫だってば。」

少しきつく当たってしまった。

 

「今日はあなたの好きなシチューよ。」

「ありがとう。」

 

ふと母に目を向けると、

キッチンに立つ母の後ろ姿がちょっと寂しそう。

 

夕方になり、父が帰ってきた。

「ただいま。」

「おかえり。」

「なんだ。来てたのか?」

逆に父はそっけない。

でもそのくらいがいいとも思う。

 

食卓に並んだ料理は豪勢にみえた。

一人暮らしの私にはこんな料理作れない。

そう思うと、少し母に感心する。

 

食事を終えた私は

「そろそろ帰るね。」

そう言って玄関に向かう。

「ちょっと待って。」

母が何かビニール袋に入れて持ってきた。

「これ。持っていきな。」

少しでも早く帰りたい私は中身を確認しないで

「ありがとう。」と返す。

 

帰宅した私は母からもらった袋を確認した。

中にはたくさんの栄養ドリンクが入っていた。

 

道理で重かったわけだ。

 

そう思いながら一本ずつ冷蔵庫にしまう。

最後の一本を入れようと手に取ると、

ドリンクのラベルに目が留まる。

 

「いつもお疲れ様!ファイト!」

 

と母の字で書かれていた。

 

私は思わず涙が込み上げてきた。

 

冷たく接してしまう私。

それでも変わらず愛情を注いでくれる母。

 

「ありがとう。」

私は心からそう思った。