popoのブログ

超短編(ショートショート)

私と娘。

シングルマザー。

不倫から始まった新しい生活。

私は娘を身籠った。

生まれたときの娘の表情が愛おしくて

私はこの子のために。と

第二の人生を歩んでいる。

 

「ほら。食事中にスマホ触らないの。」

「うるさい!」

高校生になった娘は反抗期なのか

私との会話もない。

「いってらっしゃい!」

バン。と玄関の音だけが聞こえる。

 

「ただいま。」

私は買い物袋いっぱいの荷物とともに

少し遅く帰宅した。

「ごめんね!遅くなって!すぐご飯作るから。」

私は直ぐにキッチンに立つ。

 

「ご飯出来たわよ!」

いつもは黙って部屋を出てくる娘が

出てこない。

 

コンコン。「ご飯よ!」

私は扉に耳を近づけた。

ズーッ。ズーッ。

娘は泣いているようだった。

「何かあったの?」

「うるさい。どっか行って。」

「どうしたの?ママに教えて。」

「教えて…教えて…。言って…言って…。

 うるさい!いつも聞くばっかで

 ママは何も言わないじゃん!」

 

私はある場面が頭に浮かんだ。

娘が小学生の時のこと。

「ママ。どこ行ってたの?」

「ねえ。ママ。」

私はその日、朝帰りをした。

普段のストレスもあって

ちょっとした出来心だった。

娘が寝静まったころに、

お酒を飲みに、少し出かけた。

そこで出会った男性と一夜を共にした。

帰宅すると娘は玄関で泣いていた。

「ねぇ。ママ。」

「ママ。どこ行ってたの?」

「なんでもないわよ。」

「ほら。学校行かなきゃね。用意して。」

 

部屋で泣いていた娘が心配で母に相談した。

「子どもはよく覚えてるものよ。」

「ちゃんとその日のことを謝りなさい。」

 

コンコン。「ちょっといい?」

返事はない。

私は娘の部屋の前に立ったまま言った。

「あの時は、ごめんね。」

私はあの日のことを語った。

疲れとストレスで

どうにかなってしまいそうだったこと。

ほんの出来心の過ち。

しばらくの静寂の後、扉が開いた。

娘は泣いていた。

「ママ…わたし…わたし女の子が好きなの。」

「変なことだよね。でもダメなこと?」

私は自然に笑みがこぼれた。

「ママまでバカにするの!?」

「ごめんなさい。違うの。違うの。」

「ちょっと嬉しかったの。」

 

「うーん。ちょっと変わってるかなぁ。」

「でも全然ダメじゃないわよ!」

「いいのよ。自分に正直に生きなさい。」

 

娘は泣きながら私に抱きついた。