popoのブログ

超短編(ショートショート)

ボロボロの財布

私は、父から譲ってもらった

ボロボロの財布をいつも持ち歩いている。

 

周りの人からは、

「もうボロボロじゃん、新しい財布を買ったら?」

と言われることも多い。

しかし、私はこの財布を手放すつもりはない。

 

この財布は、父が長年愛用していたものだ。

父が亡くなった後、母から譲ってもらった。

 

財布は色あせ、ところどころ傷や汚れがついている。

ファスナーは少し壊れかけていて、開け閉めしにくい。

しかし、私はこの財布が大好きだ。

 

私は、この財布を持つたびに、

父が生きていた頃、一緒に買い物に行ったことや、

公園で遊んだことなどを思い出せる。

 

そして、この財布には、私の目標も詰まっている。

 

私は、将来小説家になりたいと思っている。

まだ夢は遠いけれど、

いつか、小説家として稼いだお金で、

新しい財布を買う。それまでこの財布を使う。

そう決めている。

 

ある日、私は、いつものように小説の執筆に励んでいた。

しかし、なかなか思うように書けず、

イライラした気持ちが襲う。

そして、机に向かう時間が減っていった。

 

私は家を出て、少し旅に出た。

海のある町、山のある町を訪れては

自然のチカラに癒されていた。

そしてその移動のたびに

私は財布を手に取った。

 

ふと、父の温もりを感じる。

 

父は、いつも私に「夢を諦めるな」と励ましてくれていた。

そして、どんな困難も乗り越えていく強さを教えてくれた。

 

私は、そんな父の言葉を思い出した。

私は、そんな父の行動を思い出した。

 

「よし。机に戻ろう!」

 

再び小説の執筆に集中することを決意した。

 

そして数か月後、小説が書き上がった。

「ありがとう、お父さん。」

 

そして数年後、新しい財布を買った。

「お父さん。夢が叶ったよ。」

 

私はそっと、父の財布を飾る。

父と私の笑顔が並ぶ写真の隣に。