東の町に、ゆらという美しい女性が住んでいました。
彼女は巧みな手織りの技術を持ち、皆をも驚かせるほどでした。
一方、西の町に、つばさという男性がいました。
彼は勤勉で誠実な性格であり、馬を飼う仕事をしていました。
この国では、東と西とで激しい対立をしていました。
当然、お互いに人が接触することは禁じられていました。
しかし、ある日ゆらは、商人に連れられて、小さな子供達のために西の町で織物を作って見せました。子供達は「何て美しいものなんだ」と感激しました。
「いつか私もおねえちゃんみたいになる」そういって夢を抱く子供までいました。
また、織物を織るゆらの姿は天使のように美しかったのです。
その噂はあっという間に、町中に広がりました。
一目見ようと、町人が集まりました。つばさはその一人でした。
つばさはゆらに一目惚れをしました。
ゆらが東の町に帰っても、つばさは目に焼き付いた姿が離れません。
ある日、彼は自分の飼っている馬の中で、一番立派な白馬に乗り、彼女に会いに行く決心をしました。
綺麗な織物を織る天使のような女性。
その彼女の存在は町だけでなく、国中に響き渡っていました。
つばさは、ゆらを見つけ出すのに苦労はしませんでした。
つばさは、ゆらに会うと、先日感動を受けたこと、乗ってきた馬は育てた中でも最高の馬で、ゆらへの贈り物だということ。自分の生い立ちから趣味まで、夢中に懸命に話しました。
ゆらは、そんなつばさの話をクスッと笑いながら、情熱と愛情を感じました。
ゆらは、そんなつばさの姿に惹かれました。
2人はこの時から恋に落ちるのに時間はかかりませんでした。
2人はこっそりと夜に行き来する生活が始まりました。
しかし、そんな生活がいつまでも続くわけはありませんでした。
東西の町では互いの接触を禁じているのです。
2人は、罪を問われました。
そして2人の甘く純粋な恋は終わりを告げました。
それでも、ゆらはつばさを忘れることができず、悲しみから涙を流し続けました。
ある日、ゆらは国の役人たちのもとを訪ねました。
「お願いです。彼と会わせてください。」
「私は国のために織り続けます。死ぬまでずっと織り続けます。」
「朝から晩まで毎日織ります。」
そこで涙するゆらの姿は、まさに女神が泣いているようでした。
国はある約束を彼女に伝えます。「年に一度だけ。会うことを認めよう。」
「年に一度だけ。町と町の境にある、橋の木の下で会いなさい。」