ある普通の街に暮らす兄と私。
兄はいつも帰りが遅く、私が先に帰宅する。
(なにこれ?)玄関先に荷物が置いてあった。
(またお兄ちゃん何か買ったんだ。)
兄は最近ネットショッピングにハマっている。
週に一度は何かが届く。
今日から一週間、兄は出張だった。
荷物には「時計」と書かれていた。
19:13 なんか届いたよ!時計って書いてある
19:16 時計買ったかなあ?まあいいや。開けてみて
19:20 写真
19:21 いい感じじゃん!
19:22 お兄ちゃんが買ったんでしょ
19:25 買い過ぎて忘れちゃった。飾っといて
19:26 はーい
時計は壁掛けのオシャレなものだった。
ただ、ひとつ変わっていたのは
不定期に、特殊な鐘の音が鳴ることだった。
00分とかじゃなく。不定期に。
(なんのタイミングなんだろう?)
私は時計を見ながら、
しばらく考えたが答えは出なかった。
鐘の音は次の日も、その次の日も続いた。
21時12分。22時05分。22時58分。
その後も続く。
何だか気持ち悪くなってきた。
幸い、部屋に入ると鐘の音は聞こえない。
もう寝よう。
仕事を終えた私は(はあ。また今日もあの音か。)
そろそろ取り外そう。そう思いながら帰宅する。
するとポストに一通の手紙が届いていた。
時計はいかがですか?
部屋に音は聞こえていますか?
幼かった私は同じ大きさの声で
叫んでいたんです。
部屋にいるママとパパに。
「53分。」
家が焼かれたあの夜に
私が焼けていた時間です。
私は泣き震えながら調べると
十数年前に、火事があったその部屋は
私たちの家だった。