松田隆治は、特に優れた才能もない、
平凡な青年だった。
そんな彼は、「自分の料理屋を持つ」という夢を
幼い頃から抱いていた。
隆治は夢を実現するため、日々努力を重ねていた。
大学では経営学を専攻し、
卒業後は様々な店でアルバイトを経験。
開店資金を貯めながら、開店準備を進めていた。
「松田さん。申し訳ない。この物件の契約は解除してくれ。」
「え?何で今更?もう準備にかかっているんです!」
「ごめん。申し訳ない。とにかく解約ということで。それじゃ。」
「松田さん。申し訳ない。会社をたたむことにしたんだ。」
「え?どうしてですか?」
「最近は仕入れが困難になってね。これからって時に申し訳ないね。」
物件の突然の解除。仕入れ先の倒産。
計画はことごとく頓挫してしまう。
それでも隆治は諦めなかった。
「次はうまくいくはずだ」
「次こそは」と自分に言い聞かせ、再び挑戦を始める。
再挑戦を決意した隆治は、小さなレンタルスペースで
料理教室からを始めた。
みんなに知ってもらおうと、毎日駅前でビラを配る。
雨の日も。次の日も。その次の日も。
しかし、売り上げは低迷、資金繰りは悪化する一方だった。
そんな時、偶然にも有名な料理研究家と出会う。
隆治の熱意に共感した料理研究家は、
彼の小さなレンタルスペースで
料理教室を開講することを提案してくれた。
料理教室は大盛況となり、徐々に軌道に乗っていく。
しかし、その成功も長くは続かなかった。
ある日、隆治のレンタルスペースが入る建物に火災が発生し、
全てが灰燼に帰してしまう。
絶望のどん底に突き落とされた隆治。
「何をやっても上手くいかない。」
「もうだめなのかもしれない。」
「あの…松田さん…ちょっと来てください。」
声をかけたのは彼の料理教室に通う一人の女性だった。
彼は案内されるがままに、足を運ばせた。
「おっ!来た。来た。」
「ほらこっちよ!」
そこには料理教室の生徒。その家族。近所の人。
多くの人が集まっていた。
一人の年老いた男性が口を開く。
「松田さん!あんたの努力は知っている。」
「ワシは、あんたが以前に出店しようとしていた物件の所有者です。」
「あの時は申し訳なかった。大手企業の口車にのせられてね。」
続いて一人の女性が口を開く。
「ほら。あそこの食材店さんが倒産して困った。って前に言ってたでしょ?」
「うちの主人も食材店やってるの。もう3代目なのよ。」
「松田さん。この店で良かったら使ってくれ。」
「松田さん。主人をよろしくね。」
「松田さん。あなたの料理をみんな食べたいんだって。」
一生懸命ビラを配っていた姿。
料理教室に通った人たちの声。
そして何よりも、彼の熱意に周囲の人々は
「助けたい」
そう思った。
彼は焼け跡から立ち上がり、再び夢に向かって歩き始める。
そしてついに、隆治は念願だった自分のお店をオープンさせる。
開店当初は客足が少なかったが、
彼の努力と人柄は口コミで評判となり、店は徐々に繁盛していく。
数年後、隆治は街で最も人気のある店のオーナーとなっていた。
彼は自分の店だけでなく、他の店の成功にも貢献しようと、
地域活性化プロジェクトにも積極的に参加していた。
彼はかつて、「自分は運がない」と嘆いていた。
しかし、彼は何度も失敗を乗り越え、努力し続けることで、
夢を実現した。
「まだまだ。これからこの街を盛り上げるんだ!」
隆治の挑戦は、まだ始まったばかりだ。