popoのブログ

超短編(ショートショート)

「バカヤロー!」

東京の下町、活気溢れる商店街の一角に、

小さな和菓子屋「花月」があった。

 

職人気質の老店主・花岡月太郎は、

厳格な指導で弟子たちを鍛えていた。

その中でも、一番の弟子である吉岡優太は、

月太郎の厳しい言葉に何度も挫けそうになりながらも、

和菓子作りに情熱を注いでいた。

 

ある日、月太郎は優太に言った。

「明日は、店の看板商品である桜餅を作る。

お前一人で全て任せる。」

 

優太は緊張しながらも、月太郎の教えを振り返りながら、

桜餅作りに取り組んだ。

 

しかし、いざ月太郎に試食してもらうと、

月太郎は怒鳴り声を上げた。

「バカヤロー!」

「こんな桜餅、誰が買うか!もっと心を込めて作らんか!」

 

優太は悔しさでいっぱいになり、

思わず涙を溢れさせた。

月太郎はそんな優太を見て、静かにこう言った。

「優太、お前は才能がある。

だから、もっと真剣に取り組むんだ。甘えは許さん。」

 

月太郎の言葉は厳しかったが、

そこには優太への愛情が込められていた。

優太は月太郎の言葉を胸に、さらに努力を重ねた。

そして、数年後、優太は月太郎から店を譲り受け、

二代目店主となった。

 

優太は、月太郎から受け継いだ伝統を守りつつ、

新しいアイデアを取り入れた和菓子作りに挑戦した。

彼の作る和菓子は評判を呼び、花月はますます繁盛していく。

 

ある日、月太郎が亡くなったという知らせが

優太のもとに届いた。

優太は悲しみに暮れたが、月太郎の教えを胸に、

これからも精進していくことを決意した。

 

そして、優太は月太郎の言葉を大切にして、

弟子たちに厳しくも愛情たっぷりに指導していく。

 

「バカヤロー!」

 

今の社会において非常識な言葉かもしれない。

でもその言葉には、月太郎から優太へ、

そして優太から弟子たちへと受け継がれていく、

熱い愛情が込められていた。

 

そんな物語もあるもんだ。