福岡の路地裏にひっそりと佇む『豚骨源』。
その暖簾をくぐると、豚骨スープの芳醇な香りが食欲をそそる。
この店の店主、源太は、豚骨ラーメン一筋の職人だった。
源太の店は、決して広くはない。
カウンター席が数席と、小さなテーブルが一つ。
しかし、常連客でいつも賑わっている。
源太が腕によりをかけて作る豚骨スープは、
濃厚でありながら後味もすっきり。
麺は自家製で、スープとの相性も抜群だ。
「このスープの味、うちのおふくろの味に似てるね」
そんな常連客の言葉が、源太の胸を温める。
源太は幼い頃から、母親の手料理、
特に豚骨ラーメンが大好きだった。
母親の愛情がたっぷり詰まったラーメンの味を、自分でも作りたい。
そんな思いが、源太をラーメンの道へと導いたのだ。
ある日、店に高校生の娘がやってきた。
「お父さん、今日バイト休みなんだ。」
「ラーメンちょうだい。」
娘は、源太のラーメンが大好きだった。
しかし、忙しい父に甘える時間などほとんどない。
源太は思わず笑顔を見せる。
しばらくして、「はい。お待たせ。」
熱々のラーメンがやってきた。
娘はそれをひとくち啜る。
「やっぱりお父さんのラーメンが一番美味しい!」
そう言って、美味しそうに頬張る娘が愛おしい。
そして、お客がひいた店内で源太は娘に言った。
「お前の好きなようにラーメン作ってみるか?」
源太の問いに娘は満面の笑みを浮かべる。
「お父さんのより美味しいかもよ?」
「そりゃあ楽しみだ。」
娘は厨房に立ち、思うがままにオリジナルのラーメンを作った。
「どう?」
源太は一口食べると、笑みがこぼれる。
「美味しい!」
源太はラーメンを啜りながら娘の成長を喜んだ。
「お父さん!私、将来はラーメン屋をやりたいかも」
源太は、娘の言葉に驚いた。
自分と同じ道を歩みたいと言ってくれる娘がいる。
それは、源太にとって何よりの喜びだった。
「お父さん、いつか二人でラーメン屋をやろ!」
娘の言葉に、源太は大きく頷いた。
豚骨ラーメンを通して、家族の絆が深まっていく。
小さなラーメン屋には、これからも、
人々の心を温める豚骨スープが煮込まれ続けるだろう。