喜多方ラーメンまつりの屋台街は、
活気に満ちていた。
湯気と食欲をそそる香りが入り混じり、
人々の笑顔が溢れている。
その中で、ひときわ目を引く店があった。
老舗のラーメン店「喜多方屋」の屋台だ。
店主は、この町で生まれ育ち、
ラーメン作り一筋に生きてきた。
平打ちで太く、縮れた多加水麺。
澄んだ水と醸造の町喜多方産の醤油や
酒を使ったコクのあるスープ。
彼のラーメンは、喜多方ラーメンの伝統を守りつつ、
毎年、この祭りの人気店の一つだった。
ある年、祭りの最中、店主は、一人の少年と出会った。
少年は、喜多方屋のラーメンを美味しそうに食べながら、
「いつか、こんな美味しいラーメンを作れるようになりたいです」
と目を輝かせて言った。
店主は、少年の言葉に何かを感じた。
昔、自分がラーメン作りを始めた頃の
自分を重ねたのだ。
「このラーメンには、
喜多方の歴史と人々の心が詰まっているんだ。
喜多方の人々は、ラーメンを食べるのが大好きで、
毎日、ラーメン屋に足を運ぶ。
そんな人々の笑顔を見るために、
僕はラーメンを作っているんだ。」
後日、少年は喜多方屋を訪れ、
アルバイトを始めることになった。
店主は、少年に一つ一つ丁寧に
ラーメン作りの仕方を教えた。
麺の切り方、スープの出し方、トッピング…。
店主の情熱は、少年の心に火をつけた。
数年後、少年は立派なラーメン職人へと成長していた。
そして、念願叶って、自分のラーメン屋をオープンさせた。
店名は「新喜多方屋」。
喜多方屋からほど近い場所にあった。
オープン当日、店主は、
一番にお祝いに駆けつけた。
少年のラーメンを食べた店主は、
目頭が熱くなった。
それは、自分を超える味だった。
「よくやったな」
店主は、少年の肩をたたき、そう言った。
二人は、これからも喜多方のラーメンを
盛り上げていくことを誓い合った。
「さあ今年も喜多方ラーメンまつりだ。」
「メインはこの店だな。」
二人は新たな章の始まりを告げていた。