popoのブログ

超短編(ショートショート)

勇気

少年は、夜になると布団の中に顔を埋め、

なかなか眠れなかった。

窓の外から聞こえる風の音や、

壁の模様が、彼の想像力を掻き立て、

様々な形の怪物に見えてしまう。

少年は何度も母親に「怖いから一緒に寝て」と頼んだ。

母親は優しく少年を抱きしめ、

「大丈夫だよ。何も恐れることはないよ。」と囁いてくれた。

 

ゴロゴロゴロ!!

 

ある夏の夜、突然、停電になった。

部屋は真っ暗闇に包まれ、少年はパニックになった。

心臓がドキドキと音を立て、冷や汗が止まらない。

少年は布団に顔をうずめ、目をぎゅっと閉じても、

暗闇という恐怖が彼を埋め尽くす。

 

「お母さん!」

 

少年は大きな声で母親を呼んだが、返事はない。

 

「どうしよう、怖い…」

 

恐怖に震えながら、少年はゆっくりと布団から出た。

真っ暗闇の中で、少年は自分の心臓の音だけが大きく聞こえた。

目を強く閉じ、ゆっくり、ゆっくり、一歩ずつ。

恐る恐る、少年は部屋の隅に手を伸ばした。

 

そこには、おもちゃ箱があり、

触れた感触が、少年を少し安心させた。

少年は深呼吸をし、目をゆっくりと開けた。

 

最初は何も見えなかったが、

しばらくすると、部屋の輪郭がぼんやりと見えてきた。

少年は、おもちゃ箱の場所を頼りに、

少しずつ部屋の中を探索し始めた。

 

最初は恐怖に震えていた少年だったが、

少しずつ暗闇に慣れてきた。

そして少年は、暗闇の中にいる自分を

受け入れることができるようになった。

 

ガチャ。

やっとの思いで、部屋のドアを開ける。

廊下もまた同じように暗闇だった。

 

しかし、もうそこには恐れる彼はいなかった。

確実に一歩ずつ歩を進める。

 

「こうた!大丈夫!?」

 

母親の声がした。

 

「うん!大丈夫!」

 

そして、声のもとへ向かう。

 

「こうた!」

 

母親は少年の腕をつかみ、体を引き寄せる。

 

しばらくして、長い間続いていた停電が復旧する。

 

少年には恐怖は確かにまだ少し残っていたが、

克服できたという達成感で心が満たされていた。

 

「強くなったわね。」

 

母親は少年の頭をなでる。

そして少年は一つのことを学んだ。

 

「勇気を持つ人というのは、

恐怖を感じない人ではなく、

恐怖に打ち勝つことが出来る人のことなんだ。」と。