小さな村に、"熟成チーズ"というあだ名の老人が住んでいました。
村の人々は彼を特別扱いするわけでも、
軽視するわけでもなく、
ただ「熟成チーズ」と呼び、親しみをもって接していました。
ある日、村に若い旅人が訪れました。
旅人は村の人々に話を聞き、
村の文化や歴史について学んでいました。
そして旅人は、熟成チーズと呼ばれる老人のもとを訪ねました。
老人に会った旅人は、最初は村の歴史について聞きました。
しかし老人からの返答は「よくわからない。」
というものでした。
次に旅人はチーズについて聞きました。
すると、老人は人が変わったかのように
チーズの歴史から作り方まで
そしてチーズを通して人生の喜びまで語りました。
旅人は感心すると同時に、
「あなたは、なぜそれほど賢いのですか？」
と尋ねました。
老人は微笑み、こう答えました。
「私は、それほど賢くはありません。
ただ、人より長く一つのことと付き合ってきただけなのです。」
老人は長い人生で経験したこと、
失敗したこと、そして成功したこと、
全てをチーズ作りに注ぎ込んできたのです。
チーズ作りを通して、老人は自然の摂理、
人の営み、そして人生の深さを学んできたのです。
「あなたも旅が好きなら、歴史が好きなら、
それを長く、辛抱強く、続けなさい。」
老人のもとを後にした旅人は、
彼の言葉を胸に、旅を続けました。
旅の途中、彼は様々な困難に直面しました。
言葉の壁や、交通手段、お金の問題。
声をかけても応じてくれないことも日常でした。
何度も、「もう旅はやめようか」
そう自問自答してきました。
しかし、老人の言葉を思い出すと、
「まだ頑張れる」
そう困難を乗り越える勇気が湧いてきました。
『熟成チーズ』
まさに老人にぴったりな言葉。
彼は年老いたのではない。
一つのことに集中し、
時間をかけて学び続けることで、
生活はより豊かになり、
困難な状況を乗り越える力も生まれた。
そして、それが彼の人生になったのだ。
