popoのブログ

超短編(ショートショート)

夏の楽しみ

夏の陽射しが照りつける中、

僕は、お小遣いを握りしめていた。

向かう先は駄菓子屋だ。

それは、楽しみにしていたあずきバーを買うためだった。

 

「これ、くださーい!」

 

「はい。ありがとう。」

 

店員さんに笑顔で渡された袋を、

僕は宝物のように抱きしめた。

 

早く食べたい僕は、

駄菓子屋を出るとすぐに食べることにした。

袋を開ける瞬間、喜びでいっぱいになった。

 

しかし、袋を開けたその瞬間、

あずきバーは宙を舞ってしまった。

 

「……!」

 

僕は呆然と地面を見つめた。

楽しみにしていたあずきバーが、

アスファルトの上に転がっていた。

 

家に帰ると、お母さんは早速、

僕に「美味しかった?」と尋ねた。

僕は涙をこらえながら、

「美味しかったよ。」と答えた。

 

部屋に戻ると、僕は布団にうずくま った。

悔しさと悲しさで涙が止まらない。

 

次の日になっても

僕は元気が出なかった。

学校から帰った僕は氷を食べようと冷凍庫を開けた。

すると、そこには箱に入ったあずきバーがあった。

 

「お母さん…」

 

「どうせあんたのことだから、

昨日食べられなかったんでしょ。」

 

お母さんは全てお見通しだった。

 

「もう落ち込むんじゃないよ。」

 

そう言って家事をするお母さんの背中が愛おしかった。

 

「お母さん、ありがとう。」

 

僕は、お母さんの優しさが嬉しくて、

再び笑顔を取り戻した。

 

あの日、落としてしまったあずきバー

次の日、冷凍庫にあったあずきバー

そのことは、僕の心の中にいつまでも残っている。

そして、お母さんの優しさで、

その思い出は苦いものから温かいものへと変わっていた。

 

僕は、これからもあずきバーを食べるたびに、

あの日のことを思い出すだろう。

そして、お母さんの優しさを改めて感謝するだろう。

 

あずきバー

 

今では夏の楽しみだ。