雨上がりの夜、
私は足早に東京駅に向かった。
行き先は、彼が待つ新大阪駅。
プルルルルル
はぁはぁ。何とか電車に間に合った。
「間に合ったよ。23時45分ちゃくっ!」
彼からは「了解」とそれだけ。
それでも向かう新幹線の中では
私は楽しみで、ずっと笑顔だった。
新大阪に着いた私は、
今度は足早に改札に向かった。
そして彼を探す。
(あっ!いた!)
でも彼はスウェット姿。
「ねぇ?ご飯食べてこ?」
と最初の言葉を考えていた私は少し寂しい。
落ち込んだ私と彼との車内は地獄そのもの。
無言の時間が過ぎていく。
こんな日に限って、道はまた込んでいる。
「ねぇ。コンビニ寄らない?」
「そやな。」
そう言っておいて、車は家に直行だった。
(くぅ~。雰囲気変えようと気を遣ったのに…)
彼の家に着いた私は、簡単な料理をして一緒に食べる。
口数の少ない彼だけど、一緒にいるこの時間がやっぱり幸せ。
「ねぇ明日さぁ、ユニバ行こ?」
「そやな。」
「久々に、たこ焼きミュージアム行かへん?」
「なんで関西弁なの?」
(あぁ!むかつく~。)
(この重い空気を変えようとしたんじゃん!)
(それに!「そやな」って。)
(さっきからどっちなの??いいの?いやなの?)
「ねぇ!はっきりしてよ!」
と言いたくても、たまにしか会えない彼との時間…
喧嘩だけはしたくない。
そして、そう思う私は黙ってしまう。
普段、私は友達から、
「遠距離なのに楽しそうだね。」
「寂しくないの?」って言われる。
私だって、楽しそうにしていたって、
内心はめちゃくちゃ寂しい。
彼とは付き合って数年。
それでもほとんど私が来るばかり。
「一緒に住まへん?」
そう言ってくれるのを待っているのに。
私だって彼と付き合って覚悟はできてる。
東京と大阪。
家族とは離れ離れになる。
友達だってこっちにはいない。
それでも、大阪の女になる覚悟はできている。
大阪のおばちゃん。そう呼ばれたっていい。
いや!むしろ呼ばれたい!!
そう思うと…
(あああぁぁぁぁ!むかつく!)
だから早く「もうこっち来いや!」って言って。
「えっ?なんか言った?」
(あああぁぁぁぁ!)
私は一人であたふたしてしまう。
「な、なんでもない。なんでもないよ。」
(うわぁぁぁ!なんか笑ってるし。)
ほんと、恋しくて憎らしい私の彼。
次の日、彼と道頓堀を歩いていると
私の大好きな曲が流れてきた。
ほんと、この歌詞の通り。
私は隣を不愛想に歩く彼に言ってやりたい!
どれだけ喧嘩したって、
あなだけが大切なの。
またここに来るのだって、
あなたがここにいるからだもん。
東京タワーだって、
あなたと見る通天閣にはかなわないよ。
ああ、ほんと、近そうでまだ遠い私の彼。
「もうっ!!」
そう言って、
私は彼の腕をギュッと組んだ。