私の生まれた場所は
深い森の中だった。
木々に囲まれた古いロッジ。
家ではいつもママが編み物をしていた。
「ねぇ。ママ。お外で遊ぼう。」
「ダメよ。迷子になってしまうから。」
そうやって育った私は
いつも窓から緑の木々を見ながら
歌を歌っていた。
それが唯一の楽しみだった。
「ただいま」
パパは年に数回だけ帰ってくる。
普段は町に出て仕事をしていた。
「ほら。プレゼントだ。」
そう言って渡されたのは
笛と楽譜だった。
私は嬉しくて一生懸命に練習をした。
「パパが次に帰ってきたら聞いてもらうの!それまでにいーっぱい練習して上手になるの。」
私はママにそう言って
毎日練習に励んだ。
しかし…パパは
もう二度と帰って来なかった。
私は、寂しさ、悲しさを
忘れようと笛を吹き続けた。
パパがくれた楽譜の歌。
ドレミドミドミ
レミファファミレファ
ミファソミソミソ
私は涙が止まらなかった。
今度は笛を置いて
声に出して歌った。
「ド」はドーナツのド
「レ」はレモンのレ
「ミ」はみんなのミ…
すると窓の向こうの木に
リスや鳥たちが集まってきた。
「ママ!行ってきます!」
「暗くなる前に帰ってくるのよ。」
「うん!わかった!」
今では私は家を出て
森の真ん中で音楽を奏でている。
たくさんの動物や鳥たち囲まれて。
「ファ」はファイトのファ
「ソ」は青い空
「ラ」はラッパのラ
「シ」は幸せよ
さあ歌いましょう!