popoのブログ

超短編(ショートショート)

お家に帰る

トゥルルルルル

「扉が閉まります。ご注意ください。」

窓越しの、おじいちゃんとおばあちゃん。

「バイバイ」と手を振る。

何を言っているのかは聞こえないが

おじいちゃんとおばあちゃんの口が動く。

「バイバイ」と手を振り続ける。

電車が出発すると

あっという間に姿が消えた。

 

「ほら。ちゃんと座って。」

(うん。)と思いながらも何だか寂しい。

「いや~。疲れたなあ。」

「でもお父さんもお母さんも元気で良かった。」

「そうだな。また一年後だな。」

「よかったな。たくさん遊んでもらって。」

(うん。)と思いながらも何だか寂しい。

「ちょっと飲み過ぎたなあ。」

「私も食べすぎちゃった。」

「気疲れしただろう。悪いな。」

「仕方ないじゃない。いいのよ。」

僕はパパとママの会話より外を眺める。

 

あっという間の5日間。

お出かけして、お肉をいっぱい買ってもらった。

従兄弟ともたくさん遊んだ。

おもちもお菓子もいっぱい食べた。

夜には神社にみんなで行った。

いつもは「早く寝なさい。」って言うママも

この時だけは何も言わない。

だからいつもより、ちょっと遅くまで遊ぶ。

それがワクワクした。

 

「帰ったらちょっとゆっくりしような。」

「そうだね。今日はあるものでいい?」

「ああ。いいよ。ゆっくりしよう。」

パパとママの会話は続いていた。

「あの子も結婚するのね。」

「ああ。そうみたいだな。大きくなったなあ。」

「次会うのは結婚式かしらね。」

「そうだな。また故郷に戻らないとな。」

僕はその言葉にハッとした。

 

“故郷”

それは心が温まる言葉だった。