popoのブログ

超短編(ショートショート)

落ち着く場所

ああ〜。うふぅぅ。

俺はゆっくりとサウナに腰を下ろした。

冷えた体が温まっていく。

腰に巻いた黄色いタオル。

腕に通したゴムのカギ。

そして流れるテレビの声。

この感じが現実の疲れを癒してくれる。

 

初めて来てから30年以上経ったのかあ。

昔はここもいっぱいだった。

家族もいっぱいいて、子どもの声が浴場いっぱいに広がっていた。

そういえば

女湯からの声も聞こえていたなあ。

何だか懐かしいなあ。

 

「今では約2000軒となったようです。」

テレビの声に俺は反応した。

「ピーク時は何軒くらいあったんですか?」

「約18000軒です。」

 

隣のおじいさんから声が漏れる。

「ああ。寂しいなあ。」

そう言って顔の汗を手で拭い出ていく。

「お。久しぶりだなあ。」

見たような顔のおじさんが入ってきた。

「何やあ。にいさん。もうこのへんに住んどらんのかあ。」

「なにしとるんだあ。」

こういう会話がここにはある。

人見知りな俺もここで声をかけてもらえるのは何だか嬉しい。

裸の付き合いはこういうものかと、ここで学んだ。

 

気がつくと大量の汗が。

少し慌ててサウナをでる。

汗を流して、あぁ〜っと。

水風呂に入る。

この感覚がたまらない。

 

この小さな町の銭湯。

今日も静かなものだが

またいつか賑わいを取り戻してほしい。

さあ。今日の日替り風呂は何かな。

少し楽しみに湯船に向かう。

後ろから

「パパ!」と叫ぶ声と

「走るなよ」と注意する声とともに。