popoのブログ

超短編(ショートショート)

存在

私は、とある一国の女王である。

各地で争いが起こったのは遙かに昔。

土地と資源を求めて争いは始まった。

見たことのない肌の色。

聞いたことのない言葉。

同じ人間と思えぬ者たちがやってきた。

まず話し合い。ではなかった。

いきなり攻撃に出てきた。

私たちは何も準備をしていなかった。

私たちの土地には国民が生きていくだけの十分な資源があった。

他の国があるということも、

民に種族があることも、知らなかった。

私たちは目の前のものが全てだと思い込み、

無知だったのだ。

それらがたった、ひと月。

そう。ひと月で全てがなくなった。

荒野に果てた地。亡くなった民。失った資源。

その者たちは、私たちの地に材料を運び

新たな町を形成していった。

私はその間、牢獄に捕らえられていた。

数人だが、なぜ私たちは生かされたか?

それはこの地に隠された財宝をその者たちが

見つけることが出来なかったからだ。

「知りたければ解放せよ。」

私の言葉に耳を傾けた欲深き者。

私たちは何とか脱獄に成功した。

今いるのは、森や動物に守られ、隠された小さな土地。

一緒にいる者は、わずかな自国の生き残りの末裔たち。

隠された財宝を元手に、協力者を求め

私たちは”その時”が来るまでここで準備を進めている。

私たちには今を生きる者たちとは違った技術がある。

私たちには今を生きる者たちとは違った知識がある。

想像できないものを運んだり、作る力がある。

「私たちは生き続けるのだ」

私は自国を取り戻すため末裔たちに守られた。

こんな医術があることを皆は知らない。

これは我々が生き残るために必死に研究したもの。

そう。"保存"というカタチで私は今も存在している。

そして再び息する日は・・・近い。