その日は、極めて静かな朝だった。
僕は起き上がり部屋を見渡した。
いつもいるはずの両親はいなかった。
ガチャッ。
入り口の扉が開く。
「やめて!パパ!ママ!」
そう叫んだことだけ覚えている。
僕は手を縛られ、布を被せられ、担がれていた。
しばらくして見えた景色は海の上だった。
「ボス。なかなか元気な子どもですね。」
「ああ。いい取引ができる。」
その言葉は今もずっと頭から離れない。
ある港に着くと僕は降ろされた。
代わりに、多くの薬や銃などの武器が船に積まれた。
僕はその後、また船に乗り、何もない島へと連れていかれた。
そこで土地を耕し、農園を作った。
気付くと住人はたくさんいた。
でもそのほとんどが僕と同じ身分だった。
働け!手を動かせ!と鞭を打たれ
食事だ!と出されるのは、生きるための僅かな量だった。
島から逃げ出すものもいた。
それでも周りは海。生きて渡れるはずもない。
それでも島から逃げ出す。
数年が経った頃、大きな船がやってきた。
一人の貴族らしき人がやってきた。
「よく頑張ったね。
今から君たちはこの島から解放される!
さあ。船に乗れ!」
僕たちは何が起きたかわからなかったが
声を上げ、船に走っていた。
でもそれも儚い夢だった。
僕たちは農業ができる。
それだけで国に戻ったのだ。
島から大陸に移っただけのこと。
もう逃げ出す元気のある者すらいなかった。