どれだけ時間経ったのだろう。
私が流れ着いた島は人の住んでる気配もない。
私は痛んだ体を何とか起こし島の中腹へと向かった。
海岸沿いは静かに波が押し寄せる。
周りを見渡しても大きな木が見えるばかり。
私は草や木の枝を掻き分けながら更に足を進ませる。
小さなコテージが見えてきた。
私は誰かいてくれ。と願いながら小走りに向かった。
「すみません!」「すみません!誰かいませんか!」
入り口の扉を激しく叩く。
残念だが誰もいないようだ。
私は扉を開けてみた。扉は鍵もかかっておらず、すんなり開いた。
「すみません。」私は再び声を出し部屋の中へ一歩、また一歩と入っていった。
閑散とした部屋の中。やはり誰もいない。
カツン。何かがつま先にあたった。
アルミ素材の写真立てだった。
手に取ってみると、そこには家族の姿が映っていた。
子どもを前にして両親が肩にそっと手を置いている。
とても仲睦まじい一枚だった。
きっとこのコテージの持ち主だったのだろう。
私はそれからもコテージの中を探ってみた。
しかし他には何も見つからなかった。
私の乗った小舟が転覆して、私は全てを失った。
体一つ残ったのが奇跡だ。
でも通信手段もない。持ち物が何もない。
とにかくここを拠点として、島中を歩いてみることにした。
しかしやはり何もなかった。
絶望を感じながらコテージに戻った。
電気もない。水もない。
やがて段々と暗くなり、私は疲れからか目を閉じた。
次の朝、私はとにかくこの島から出る手段を考えた。
出来ることは島にあるものでイカダを作ることだった。
食料も火もない現状で、私は草や木の実を食べながら
数日後やっとイカダが完成した。
「とにかく海に出よう。」
私はそう決意し、次の朝に島を離れた。
少しして、私は振り返り、島を眺めた。
とても美しい島だった。
まるで絵画や写真のような美しい姿だった。
きっと違ったカタチであの島に辿り着いたなら
とても楽しむことが出来ただろう。
そう思いながら私は再びイカダを漕いだ。