「おばあちゃん。だいじょうぶだよ。」
「いいの?いいのに。」
「たまたま小銭あるから。」
「ご馳走しようと思ったのに。ごめんね。」
「いいの。だいじょうぶ。」
「ほんとうに?いいの?悪いわ。」
「いいよ。いいよ。」
喫茶店のレジで私の前にいたふたり。
「かばんちゃんとしめた?」
「うん。しめた。」
「お財布いれた?忘れてない?」
「うん。だいじょうぶだよ。」
そう会話しながら出ていった。
私は自分の会計をすぐに済ませた。
外に出るとまだふたりはいた。
「ありがとう。ごちそうしてもらって。
そんなつもりじゃなかったのに。」
「わかってるよ。いいよ。」
「ありがとう。ありがとう。」
私は少し見つめていたら、おばあちゃんと目が合った。
小柄なメガネをかけた優しそうなおばあちゃん。
私に向かってにっこり笑って、軽く頭を下げる。
私も咄嗟に頭を下げちゃった。
「気を付けてね。何があるかわからないから。」
「うん。おばあちゃんもね。」
「ありがとね。次いつ会えるかわからないから。
ちょっとさみしいわね。さみしい。」
「うん・・・。またね。」
「また早く会いたいわ。ありがとう。」
「おばあちゃんも体に気を付けてね。」
そう言って改札口の方に向かったのは
おばあちゃんだった。
その背中はすごく寂しそう。
何度も振り返って、彼女に手を振った。
彼女もおばあちゃんの姿が見えなくなるまで
笑顔で手を振っていた。
僅かな会話と行動に、ふたりの人柄が垣間みえた。
(遠くから会いに来たのかなぁ?)
(すごく楽しい時間だったんだろうなぁ)
(おばあちゃんも彼女も。いいひとたちだなあ。)
私は少し涙ぐんでしまった。
「すごくいいおばあちゃんですね。」
「え・・・。あ。はい。」
あまりの素敵な光景に思わず声をかけてしまっていた。