popoのブログ

超短編(ショートショート)

駅からの道

私の地元には有名な桜並木がある。

駅からの坂道。

堂々と立ち並ぶ桜の木。

 

学生時代、この道を通る毎日。

桜の花が咲く頃には、新しい生活の始まりを感じた。

桜の花びらが舞う頃には、新しい想いを抱いていた。

 

「いってきます。」と少し慌てた私。

「ただいま。」と笑顔でステップする私。

 

この桜並木は、たくさんの私を見守ってきた。

 

同じ町でも、この道は私にとって特別だった。

友達と自転車で坂を下った道。

家族と手を繋いで登った道。

この道を通るときには気持ちが晴れやかだった。

 

社会人になり、私はこの町を離れた。

そして、離れて初めて気付いた気持ち。

 

あの桜が見れないのは・・・

 

「さみしい。」

 

それからというもの、

この時期には実家に帰るようにした。

 

「ただいま!」

 

私はそう言って、駅の改札口を出る。

 

毎日の疲れや、ストレス。

悩み。不安。悲しみ。

そう言ったすべてを忘れさせてくれる桜並木。

 

「ママ!はやく行こう!」

 

今では私の子どもも、この桜並木が大好き。

 

親子で通るこの桜並木。

 

お母さんはこんな気持ちだったんだなぁ。

 

「さあ。おばあちゃんに会いに行こう!」

 

「うん!」