popoのブログ

超短編(ショートショート)

夜風に吹かれて

残業が終わり静まり返った帰り道。

ポツンポツンと街灯の中、

私は駅から少し遠回りをする。

何か用事があるわけではない。

この風が冬の到来を知らせてくれる。

同時に少し寂しい気持ちになる。

私はこの風を感じると、学生時代を思い出す。

バイトの後の思い出や

友達との思い出。元彼との思い出。

色々なことを思い出す。

もちろん楽しい日々だった。

朝までお酒を飲んで夜を明かしたことや、

除夜の鐘が鳴る頃に、初詣に出かけたり。

意外に夜中に外出していたんだと思う。

今では家でゆっくりする日々。

帰宅後、また出かけよう。なんて思わない。

それはそれで、今もまた充実している。

だけど、やっぱりちょっと寂しいのかも。

私の周りには、家族以外のいつも誰かがいたから。

「飲みに行こう」の誘いが懐かしい。

「カラオケ行こうよ」の誘いが懐かしい。

「今から夜の海に行こう」なんて、ちょっとワクワクした。

そう振り返りながら、

今日も私は少し遠回りをして帰宅する。

家までの帰路が私にとっては、ちょっぴり寂しくて

ちょっぴり懐かしい大切な時間。