popoのブログ

超短編(ショートショート)

甘い予感

路地裏に、ひっそりと佇むカフェ「ひだまり」。

俺はバイト生活を送る。

今日も慣れたようにエスプレッソマシンを操り、

カウンター越しに笑顔を振りまいていた。

 

そんなある日、いつものように開店準備を始めた俺の目に、

今まで見たことのない女性が飛び込んできた。

ロングヘアにナチュラルメイク、

どこか儚げな雰囲気を漂わせた彼女は、

カウンターに座るなり、

静かに「カフェオレ、お願いします。」と注文した。

 

俺は、その女性に一瞬で心を奪われた。

彼女の醸し出す静かな美しさは、

まるで店内の香りと混ざり合って、

彼の心を包み込んでいくようだった。

 

それから数日後、俺は再び彼女を見かけた。

彼女は同じ時間に来店し、

同じカフェオレを注文していた。

俺は、彼女に話しかける勇気が出なかった。

カウンター越しに送る笑顔と少し微笑む彼女の笑顔。

この一瞬が俺の胸をドキドキさせていた。

 

「あの・・・傘。これ。忘れてますよ。」

俺は店を出ようとした彼女を呼び止めた。

「ありがとう。」

俺は心臓が飛び出しそうだった。

「あっ。いや。あっ。はい。」

そんな俺に彼女はクスッとした。

 

「私、ここの雰囲気が好きなんです。」

「また来ますね。」

 

そう言って彼女は駅の方へ向かった。

俺はただその後ろ姿をずっと見つめていた。

 

それからというもの、俺は話題を考えて

勇気を出して、彼女に少しずつ声をかけた。

天気の話。好きな音楽。好きな映画。

なんでもよかった。

俺はただ彼女の笑顔を見るだけで、

心が温まるような気持ちになった。

 

俺は彼女が幸せそうに見えた。

(きっと彼氏はいるんだろうな。)

俺の頭の中を、駆け巡る。

 

「ごちそうさまでした。今日もありがとう。」

そう言って微笑む彼女が愛おしくてたまらない。

 

俺は、彼女が帰ってからも、家に帰ってからも、

ずっとずっと

考えるのは彼女のことばかりになっていた。

 

(きっとこれが恋なんだ。)

 

「あの…今日はちょっと甘めでお願いします。」

 

俺は淡い恋心を胸に最高のカフェオレを作る。