popoのブログ

超短編(ショートショート)

愛と記憶を紡ぐ

静かなカフェ。

テーブルの上には、アルバムとデジタルカメラ

新郎の翼は、アルバムをめくりながら、

新婦の澪の笑顔に何度も見入っていた。

二人の出会いは学生時代。

部活で一緒になり、互いの夢を語り合い、

いつしか惹かれあっていた。

 

「澪、このビデオには、僕たちのすべての思い出を詰め込みたいんだ。」

 

翼の言葉に、澪は微笑む。

 

「うん、楽しみ!」

 

二人の希望は、ただ二人の記録を残すことだけではない。

結婚式当日の感動を、家族や友人にも分かち合いたい。

そして、未来の子供たちにも見てもらいたい。

 

ビデオグラファーの山田は、

二人の話をじっくりと聞いた。

二人の出会い、プロポーズの言葉、

そして結婚式への思い。

山田は、二人の心に寄り添い、

オリジナルのシナリオを制作した。

 

結婚式当日。

会場は、たくさんの笑顔で溢れていた。

山田は、二人の姿を、

そして会場のあたたかい雰囲気を、カメラに収めていく。

 

緊張している新郎新婦を、山田は優しく励ます。

「緊張しますよね。でも、今、この瞬間を楽しみましょう。」

 

二人の誓いのキス、感動のメッセージ、

そして、退場のとき。

山田は、二人の後ろ姿を見つめながら、

シャッターを切り続けた。

 

撮影された映像は、膨大な量だった。

山田は、一つ一つの映像を丁寧に見ていき、

二人の物語を紡いでいく。

BGMは、二人の好きな曲。

ナレーションは、二人の言葉。

 

編集作業は、長い道のりだったが、

山田は、二人のために最高の作品を作りたい

という一心で、作業を進めていった。

 

そしていよいよ、完成したビデオの上映。

 

緊張した翼の姿。

その手をギュッと握りしめる澪。

たくさんの笑顔とたくさんの涙。

そして最後の退場のシーン。

エンドロールから数秒後、

ひとつの映像が流れる。

それは二人にとっての思い出の場所。

白い砂浜で、このビデオの為に撮影した姿だった。

 

現場は、二人の笑顔と感動の涙に包まれた。

 

ビデオを見た新郎新婦は、

これまでの道のりを改めて振り返り、

互いの愛を再確認した。

家族や友人たちも、二人の幸せを心から祝福した。

 

結婚式から数年後。

二人のもとには、可愛い子供が生まれていた。

翼は、子供たちに、ウェディングビデオを見せた。

「パパとママの結婚式だよ。」

 

子供たちは、キラキラした目で画面を見つめていた。

「パパカッコいい!」

「ママきれい!」

このビデオは、二人の愛と記憶を、

これからもずっと繋いでいく。

 

結婚式は、人生の一つの章。

ウェディングビデオは、

その章を永遠に記憶に残すための宝物。