popoのブログ

超短編(ショートショート)

お菓子のホームラン王

日本から約15時間前後の道のり。

一人の男はローマの地に着いた。

(何て美しい町なんだ!)

感動と興奮でいっぱいだった。

(あの賑わいはなんだ?)

近付いていくと、やっていたのは

「お菓子祭り」だった。

大勢の子供たちが楽しそうに

次々とお菓子を食べていた。

そして、その子供たちの笑顔と表情が

素晴らしく美しかった。

(お菓子でこれ程まで喜ぶのか...)

和菓子職人だった彼は驚いた。

彼も子供たちと同じようにお菓子を手に取る。

(何だ!?この感触!この味わい!)

(俺の作っていたものは何だったんだ。)

それは落胆ではなく、まだまだやれる!
という希望のようなものだった。

(日本でも俺はこの光景が見たい!)

彼はすぐさま日本人にも好まれる洋菓子を作り始めた。

子供たちの、あの表情。あの笑顔。

そしてイタリアで知ったあの光景。

(楽しさに溢れるお菓子を作りたい!)

その想いが彼を夢中にさせた。

 

それから何十年という月日が経った。

「心から笑顔になってもらえるお菓子」

それは今もなお皆に愛されている。